夢 ページ8
「いやぁ、ごめんねAちゃん！わざとじゃ無いよ？お仕事長引いてねー。」
『もう言い訳はいいですよ…。何となく真夏さんな気がしてましたから。』
買い物袋は食材と日用品で はちきれそうだった。
この量は真夏さんでも手が足りないだろうし、と自ら買い物に付き合ったのだ。
「お？」
真夏さんの声に顔を上げる。
そこには、何かを囲むように人だかりがある。
『何でしょうか…って真夏さん！？』
真夏さんはその人だかりに小走りで向かい、そこにいる人に声をかける。
私も思わず駆け寄った。
「近くで衝突事故があったって。…たぶん、事故じゃなくて事件だと思うよ」
『どう言う事ですか？』
「奥で応急処置してる女子高生が一人いるらしい。病院が二日前の大型テロで混み合ってんの」
それを狙って、わざわざけが人を増やす真似をしたということか。
私は買い物袋を漁る。
「何やってんの、Aちゃん？」
『救急箱の中身、今日補充に買いましたよね？』
「うん……って、え？」
『向こうに行って手伝います。ほら、真夏さんも』
真夏さんの手を掴み強引に引く。
人をかき分け、その先にいたのは＿＿＿…
『やっぱり。……氷高部長！』
「！お前…」
『怪我人は何人ですか？お手伝いします！』
部長は戸惑った顔をする。
そして、申し訳なさそうな顔も。
「お前、医者に興味はあっても医療の知識は無いだろう。何が出来る」
『そればかりはどうにも出来ませんけど…でも、何も出来ないって嘆く以外にも出来ることはあります。』
「だからって…二人でどうこうできる数じゃ無いだろう！」
周りにいたうちの男性が声をあげた。
それに同調するように、数人。
彼女は俯いた。
『部長、貴方は！』
「…っ、」
『貴方は、本当に強い意志のある方です。正直…尊敬します。だから……夢を諦めた私だから、言います。』
彼女の
『貴方は……何を目指しているんですか！！』
「………。ひたすら、馬鹿にされた。人と関わりをうまく持てない僕が、人を救えるわけないって。それでも僕は＿＿＿＿医者になりたいの」
その言葉に、笑みをこぼした。
『ならやりましょう。二人で。』
「……分かった。お前は指示通りに動いてくれ。」
広げた応急処置の道具を見渡す。
と、そこで真夏さんが踵を返す。
『………真夏さん？』
「これ以上、怪我人増やさないようにしてくるね。」
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
