最恐護衛 (ページ8)

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「じょんぐく、わたしのこと嫌いだから守ってくれないかもしれないけどね。ある意味一番危険かも」

嫌味っぽくそう言う。
じょんぐくの表情は想像できたから見なかったけど、絶対怖い顔してると思う。

「そんなことないわよ。絶対守ってくれると思うけど？」

”ね？じょんぐく”とわたしの代わりにじょんぐくを見るお姉ちゃん。
どんな表情だったのかしらないけど、お姉ちゃんが小さく笑っていた。
たぶんろくな顔じゃないわ。

食事の時間になると、じょんぐくは椅子に座らないで一歩引いて立っていて。
「食べないの？」と声をかけると『護衛でついてきたから』とぶっきらぼうに言われた。

へえ、こういうときはちゃんと役目を果たすんだ。
真面目だね。

感心しながらそれ以上何も言わずに椅子に座る。
お姉ちゃんが「そんなの気にしなくていいわよ」と声をかける。
じょんぐくは断りを入れていたけれど、何度も促すお姉ちゃんに負けて結局一緒に食事取ることにしていた。

屋敷の食事会が終わったであろう23時頃、お姉ちゃんの家でお風呂も済ませて後は寝るだけにしてから帰り支度をする。

手を振って見送ってくれるお姉ちゃんに見えなくなるまで振り返したあと、ようやく前を向く。

行きも帰りも全く会話がないのはじょんぐくが護衛のときはいつものことだった。
あっちもわたしに話しかけようとしないから、それが普通だった。
話しかければ憎まれ口を叩き合うだけだし、変に感情を振り回されたくもないし。

まあでも、いつからこうなったんだろうなあ、くらいは考えてしまう。
昔はわたしもじょんぐくと仲が良かった。
3つ年上の、他のみんなと変わらない優しいお兄ちゃんって思ってた。
幼かったとはいえ、一緒にお風呂も入ったし、いつもじょんぐくにくっついていた。
今はてひょんやじみんが一番仲良いけど、昔はじょんぐくに一番懐いてた….そんな記憶がある。

じょんぐくもわたしのことを『A』ってそのときはまだ呼んでくれてたし、笑いかけてくれてた。
いつでも相手してくれて、酷いことも言わなかった。

一番好きな、優しいお兄ちゃんだった。

………ほんと、いつからこうなったんだっけ。

記憶をたどっていたら眠くなってきて、自然とまぶたが降りてくる。

意識が途切れる瞬間、わたしの体にふわっとお気に入りの柔らかい素材のひざ掛けが掛かる感触がした。