最恐護衛 (ページ39)

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大きなホテルに車が止まって、全員で降りる。
こんな豪華な場所、泊まる必要あるのかな…と田舎者のようにおどおどしていると、なむじゅんが〔何も心配するな。お金のことも、自分の命も〕と声をかけてきた。

わたしの考えていることがわかるのか、それとも声に出ていたのかどちらかはわからない。
だけど背中を優しくぽん、と叩いてくれる手が酷く優しくて。
立ち尽くすわたしを置いて先に行く彼の背中を見つめながら、もしもこれが演技で、なむじゅんが裏切っていたらどうしよう、とせっかく優しく言葉をかけてもらったのに酷いことを思ってしまった。

じみんもてひょんも、それぞれなむじゅんに着いていくようにわたしを置いて歩いていく。

みんなを信じたいのに、誰のことも信用できなくなっている自分がいることに気が付いて、どうにかなりそうだった。

「……家族みたいな存在だって思ってたのに、」

幹部の人たちはみんな、わたしのことを妹のように、時にはわが子のように可愛がってくれた。
幸せだった思い出が頭をめぐって、辛くて、泣きそうになる。

まだ歩き出せないわたしに、最後に車からおりてきたじょんぐくが隣で立ち止まる。

『……お前には俺がいるだろうが』

そう言って乱暴に髪の毛をわしゃわしゃと乱される。
言葉も行動も乱暴で、冷たいくせに誰よりも信用できると思ってしまった。

だって彼は、絶対に組を裏切らないと知っているから。
ずっとわたしと一緒にいたから、裏切り者じゃないと知っている。

「……ぼさぼさになったんだけど」

乱れた髪の毛を整えながら、少しだけいつもの調子に戻ってそう言う。

『もともとぼさぼさだろ』

そう言っていたずらに笑うじょんぐく。

『早く行かねえと置いて行かれるぞ』

そしてわたしの手を取ってからすたすたと歩き出した。

誰も信じれられない状況に、一番ムカつく相手だけが絶対的な味方だなんてほんと、笑わせてくれる。
だけど今は、そんなじょんぐくの存在がありがたくてたまらなかった。

思えば今日は、ずっとじょんぐくに救われている。
ずっとわたしを気にかけてくれてるし、身を挺して守ってくれてる。
わたしのこと嫌いなくせに、本当なんなんだろう。

意味わかんないし、そういう矛盾だらけの行動にもムカつくけど………でも

「……ありがとう、じょんぐく」

じょんぐくがいて、本当によかった。

届くかわかんないくらい小さく告げると、彼の口角が少しだけ上がった気がした。