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『とりあえず、ここにいてもしょうがねえだろ』
そう言って立ち上がるじょんぐく。
同じように体を起こそうとすれば、反動で揺れる漁船にふらついてしまいそうになる。
すかさずてひょんが手を差し伸べてくれて、転ばないで済んだけど…さっき切った足の裏に痛みが走った。
【どうかした?】
声には出さなかったけど顔を歪めたわたしを見逃さなかったてひょんが声をかける。
「なんでもないよ」と言えば【そう?】とすぐにそっぽを向かれてバレなかったことに安心した。
船を降りるじょんぐくとてひょんに”どこ行くの?”と聞こうと口をあけたばかりの時、待ってくれない敵の声がわたしたちの耳を貫く。
じょんぐくとてひょんを超えた、ずっと奥のほうから「おい、いたぞ!」と既視感のある叫び声が聞こえて、ああ…また走らないといけないのかと落胆する。
もう焦るとか怖いとか、そういう気持ちがなくなるくらいには冷静になっていた。
じょんぐくがわたしの手を取ってまた走りだす。
だけど炎が回っていない場所が少なくて、逃げきれなくて。
幸い建物が多くて隠れやすいから捕まりはしないのだけど、銃を構える音を聞いたら冷静だったわたしも怖くなってしまう。
四方八方からバァンッと撃ちまくる音が聞こえて、じょんぐくとてひょんの2人がいても逃げきれないこの状況に陥ってしまったら流石にどうしようもないのでは…と思った時だった。
突然足を止めたじょんぐくが『逃げてばっかじゃかっこ悪いよな、』なんてぶっ飛んだ発言を言い出した。
助けを求めるようにてひょんの方を向くとにやりと笑いながら【同感】と頷いていて。
「ねえ何言ってんの?あっちは銃だよ?素手で勝てるわけ、」
ないじゃん。
とまだ最後まで言ってないのに、わたしの声なんて聞いてくれない2人が敵のほうへと進みはじめる。
手を離されたということはわたしはここで待っていろということなのだろう。
「……死ぬわこれ」
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作者名:空 | 作成日時:2023年12月14日 14時