最恐護衛 (ページ32)

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「限られた人、」

【そう。幹部っていう限られたやつら。…黒幕は幹部のうちじんひょんと、ひょんを逃がすために帰ってきたほそぎひょん、それからここにいて被害を受けたじょんぐく以外の7人のうちの誰かなんだろうね】

「てひょんも違うでしょ」

だってここにいて一緒に逃げたじゃん。それに、ひとりだけ狙われて車も携帯も壊れされちゃったんだし。

【わかんないよ？俺が計画してるのかも】

そういって含んだ笑いを見せるてひょん。

「そしたら俺も違うっていうでしょ」

それに、長年一緒にいるからか、根拠はないけどてひょんは違うんだろうなって思う。本当に、勝手な憶測だけど。

「とにかくてひょんは絶対違うよね」

【..お嬢は甘いねえ】

まだくだらないことを続けそうなてひょんを適当に流して話を進める。

「それでも候補は六人かあ、多いね」

正直、誰も疑いたくない。
みんなと過ごした日々を思い浮かべたら誰かが裏切ってるなんて信じたくない。
幹部の誰かが裏切ってるなんて、そんなこと夢でも嫌なのに。
今なら怒らないから夢であってくれないかな。

『……きっとそいつは、ここが限られた人しか知らないってのも分かってて勝負に出たんだろうな』

【だろうね。じゃないとこんな馬鹿な真似しないと思う】

「……ていうか今何時なんだろ。携帯水没してなんにもわかんないや」

あんまり裏切り者が誰とか考えたくなくて話を逸らす。

結局どのくらい寝れたんだろう？
こんな状況のせいで睡魔に襲われはしないけど、横になったらすぐ寝れるよ。
なんか全然寝た気しないし。

空を見上げるじょんぐくが月のある位置をみて『たぶん、夜中の2時くらい』と呟いた。

へえ。月の角度で分かるのすごいね。やくざの幹部ってなんでもできるんだね(そんなことない)。

「まって…？じゃあわたしたち全然寝てないじゃん！！！」

体感15分は盛りすぎたかもしれないけどそれでも実際は2時間くらいしか寝てないんだよね！？ていうか2時間も寝た！？

携帯も壊れて、誰との連絡手段も絶たれた。元から通じなかったけどそれでもないよりはましだった。
行きそうな場所も、同じように始末されてるのならもうどこに行けばいいのかわからない。
それ以前に、今からわたしたちはどうすればいいのだろう。また行き場を失ってしまった。

「服も濡れちゃったし、なんならてひょんとじょんぐくのなんて燃えてるところあるね」

呆れるしかできないこの状況に、もう笑うことしかできない。