最恐護衛 (ページ21)

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走りだす車の中、沈黙が流れる。
やっと少しは落ち着いた状況で、お互いに一時だけでも体を休めていた。

しばらくしていきなり『…お前さ』とじょんぐくが口を開く。

横を見ると、じょんぐくが目を閉じたまま話し出す。

「なに？」

『間違っても先に行けなんて言うな』

その言葉で思い出す、追われていた時のこと。
もう走れないと思ったわたしが、じょんぐくに言った言葉。

『俺はお前の護衛なんだから、俺を逃がしてどうすんだよ』

そう言ってからゆっくりと目を開けるじょんぐく。
目が合って、逸らせないくらい真っ直ぐな瞳に捕らえられる。

怒ってる。
あのとき、手を放そうとしたこと、すごく怒ってる。

いつも馬鹿にしてきたり揶揄ってきたり。
冷たくされることも多いけど、今向けられている視線はいつものものとは訳が違った。

押し付けられた護衛で、鬱陶しく思っていると思っていたからこんなことを言われるのは意外だった。
じょんぐくはなんだかんだ言ってもわたしをちゃんと守ってくれるつもりらしい。

そのことに初めて気が付いて、なんだかわたしばかりいろんな出来事を軽視していたことが申し訳なくなった。

あの家に生まれた瞬間から伴う危険とか、護衛を付けられた本当の意味とか。
いつだって危険と隣り合わせだったというのに、知っているふりをして本当はなにも分かってなかったんだなって。
手を放そうとした時だって、心のどこかで死にはしないって思ってた。
だけどあの時、本当に手を放していたらわたしは今この世にはいなかっただろう。