最恐護衛 (ページ3)

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本当にただこっちに用があるだけだったのか、二つ目の分かれ道でわたしとは別方向に歩いて行ったじょんぐく。

いくら裏切者がいるかもしれないからって、流石に屋敷の中でもずっと一緒にいなきゃいけないなんて苦痛すぎるからどっかいってくれてよかった。
裏切者が万が一いたとしても、屋敷の中ではなにもしてこないでしょ。
家の中でわたしに危害を加えるにはリスクが大きすぎるだろうし。
まあ本当にいるのかもわたしを狙うかもわかんないんだけどさ。

自分の部屋を通り抜けて向かう先は屋敷内にある庭園で。
その隅でいつもと変わらず駄弁っている２人を見つけては駆け寄った。

「てひょんー！じみんー！」

わたしに気が付いた二人がそろってこっちを見る。

向かい側に同じように地面に制服のまま座ってじょんぐくの愚痴を吐こうとした瞬間、てひょんが先に【お嬢、じょんぐくが護衛についたらしいね】といかにも面白いといわんばかりの表情で言った。

「……なんで知ってんの！？さっき言われたばっかなのに！」

けらけらと笑うてひょんの横にいたじみんが自分の上着を脱ぎ、胡坐をかくわたしの上に掛けながら〈盗み聞きしてたんだよ、あいつが〉とさっきわたしが歩いていた廊下を指す。

「あー…」

そこにいたのはかなり下っ端の、名前もよくわからない人で。わたしたちが見ていることに気がつくと、慌てて頭を下げていた。

この組には沢山の人間が所属しているけれど、入れ替わりがものすごく激しい。
下っ端の人たちはわたしが名前を覚える前に死んでしまうことが多く、正直ずっと所属している幹部クラスの人間しかわたしも覚えることができない。お父さんの娘として生まれたわたしにみんなはよくしてくれてるけれど、わたしは心の中でこの人誰だっけ…って思っていることも多かった。
昔は全員覚えようと努力してたけど、その努力も水の泡となって消えていくし。ひとり亡くなっていくたびに、努力は無駄なんだと思い知らされてしまう。