最恐護衛 (ページ19)

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『黒い車が入り口前に止まってた。顔は見えなかったからどこのどいつかわかんねえけど…３人降りてきて、そのうちの１人、真ん中にいたやつが屋敷の中にいた誰かに向かって撃ってた。撃たれた相手も顔が見えなかったからわかんねえ。俺に気がついて追いかけてきたけど、追いかけてきただけで撃とうとしなかったからもう弾はなかったんじゃねえの』

冷静に思い出して事態を整理するじょんぐく。

「てひょんやじみんは？幹部のみんなも……、じんくんは…！？」

次期組長を狙ってる人間の仕業なら、じんくんが一番危ない。

「あ、ちょ、待って…お父さんは！？」

だけどもしも、もしもすぐにでも組を乗っ取りたいのなら、一番危ないのはお父さんではないだろうか。
銃の向いた先がお父さんだったら……。
直に玄関に出向くことはないと分かっていても、可能性がゼロとは言い切れない。

最悪の想像が頭の中を駆け巡って、今まで溢れなかった感情が一気に押し寄せてくる。
恐怖、絶望、不安、心配、そういうの全部が一気に押し寄せて、目が熱くなっていく。
でも、今は泣いたらダメだ。泣いたって何も変わらない。
事実が何かもわからないのに憶測で泣いていたらキリがない。気を強く持たなきゃ、…だめなのに。

じょんぐくは肩を震わせながら必死に涙を堪えようと下を向いているわたしに気がつくと、その大きな手を肩に置いてから『落ち着け。まだ何も決まってねえ。それに、あいつらや組長が簡単にくたばるわけねえだろ』と言って励ました。

『まず敵襲を受けるのは、入口付近に部屋がある下っ端からだ。異変に気がつかねえわけねえし、俺らが走ってる時に屋敷の中から声が一切聞こえなかった。だからきっとどこかに身を隠してる。そのうち連絡も取れるだろうから、大丈夫だ。とりあえず、お前は一旦落ち着け』

じょんぐくのその言葉に、そうだよね…と頷いた。
じょんぐく以外の幹部たちもお父さんも、殺しても死なないような人たちだから、きっと大丈夫。

“きっと“という言葉は確信がないから使うもので、絶対大丈夫とは言い切れないのに、じょんぐくが大丈夫って言ったら本当に大丈夫だって思える不思議な安心感がある。

大きな手から伝わってくる温もりも、わたしを安心させてくれる要因の一つだった。