最恐護衛 (ページ14)

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『うっせえわ』

また声に出ていたのか、突然そんなことを言われてはっとする。
思っていることを口にしてしまう癖があるらしく、いつも心の声は周りに筒抜けだ。

『俺、モテるけど』

また何かうざいこと言われるんだろうなあ、と思っていたら全く見当違いのことを言われる。しかもモテるとか聞いてないし。

「はいはい」

どうせ嘘だろうと思って聞き流す。
じょんぐくもそれ以上なにも言わなかったからやっぱり嘘なんだろうなーって思うけど、先に食べ終わって私を待っている姿を見てると本当なのかもなって思うところもあって。

だってじょんぐくはわたしにだけ意地悪だから。
お姉ちゃんとかに対する態度見てると、本当にモテるのかもしれないなって。

そう思うとなんか余計目の前のこいつに苛立ってきた。
わたしにも優しくしてくれたらいいのに、本当嫌な奴だ。

どうしてこうなったのか思い出せないのが一番歯がゆいんだけど。
じょんぐくと仲良かった時の記憶はあるのに、こうなったきっかけはどう頑張っても思い出せない。
気が付いたら仲悪くなってたんだよなあ。

『人の顔じろじろ見てんじゃねえよ』

わたしの視線に気が付いたじょんぐくが携帯を見ていた顔をあげる。

……まあいいや。考えてもどうせ思い出せないし、喧嘩でもしたのだろう。
その喧嘩をここまで引きづってるなんて大人げないなあ、じょんぐく。

きっと、わたしがじょんぐくのことを嫌なやつとかムカつくやつだとか思ってるのに嫌いになりきれないのは、たまに優しくしてくれるからってのもあるけど、昔の記憶が消えないからってのもあるんだろうな。

優しいだいすきなお兄ちゃんだったからこそ、心のどっかで嫌いになりたくないって思ってるんだと思う。
まぁ、今はあの頃の優しさは無くなっちゃったけど。

ただ、時折見せる優しさは昔の大好きなじょんぐくを思い出させる。それが余計に憎さを増すから辛い。

「見てないし」

そう言ってバレバレの嘘をついてから残っていたパンケーキにがっついた。
無表情ではあるけれど、どこか機嫌の悪そうなじょんぐくに、どうせ今考えてたことも全部筒抜けなんだろうな、と思いながら。