【4】宮野さん(女)はえいとです【選択編】 (ページ21)

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⑳苦しむ為に生きないで【橙】ページ21

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橙Side

もっと身勝手な人やったら良かったのに。

Aちゃんが話したことは、全部避けられへんことやった。

我儘、なんて君は言うたけど。

僕らが、それをどうやって止められるんやろう。

もう、答えは出ていた。

あの後、僕らは7人だけで集まることにした。

すべてが、知らない所で進んでいて、もう変えられなくなっていたことに、怒りを感じた。

………でもそれ以上にそれを背負ってきたAちゃんの苦悩を思うと、やりきれんくなった。

命を削っているかもしれない病気を治したい

もしチャンスがあるなら母親になりたい

普通の人生を取り戻したい

どれもこれも、一緒に居った僕らには、痛いほど分かってしまった。

だから誰も、あの子に頭ごなしに「辞めるな」とか「無責任や」とかは絶対に言えへんかった。

一緒に仕事が出来んくなるのよりも、僕らには、あの子の命が大切やった。

何時間も皆、止めどなく喋り続けた。

途中には、思い出を語ったりした。

初めて会った日。

一緒にレッスンした毎日。

エイトに加入した日。

ドラマの主役に決まった日。

初めて紅白のステージに立った日。

泣いていた日。

そして、笑っていた日。

結論は社長の言うとおり、あの子を、きらびやかでおぞましいこの世界から、美しく見送る。

やっぱりそれしか残ってへんかった。

それしか僕たちに出来ることは、なかった。

僕は、ずっとAちゃんが好きやった。

いや、皆、Aちゃんが好きやった。

大好きで大切で、一生懸命守ってきた。

でも僕らが一緒に居るために、Aちゃんに辛い努力を続けさせてしまった。

―――僕らがあの子を駄目にしてしまった。

これは僕のエゴや。

でも皆が思うてるはずのこと。

Aちゃんごめんな。

もう苦しまなくてええねんで。

人生を、自分の為に使うて。

……ごめん。

終わりが近づいていた。

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