【4】宮野さん(女)はえいとです【選択編】 (ページ20)

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⑲あなたはそのままでいてページ20

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ASide
メンバー打ち明けより数ヶ月前

「もしもし、お母さん？」

「A、どうしたの？」

「あんな、私、この仕事辞めよう思うてん」

「……そう」

「私、先生に言われたやん。
子供作られへんくなるって。
そん時、やっぱり欲しいって思うてしもうてん。
……馬鹿やとは思うてる…
今の全部捨てて、今更、普通の幸せ欲しいなんて」

「……お母さんはな、あんたのお母さんやから、あんたを、娘としか見たことないんよ。
他の人らみたく、なんや中性的とか男の子みたいなんて、思うたことないねん。
やから子供欲しいのやって、全然変に思わんわ。
お母さんは、あんたの味方やねんから。
好きにしい。
で、あんた、結婚でもするん？」

「ごめん、そこは未定やねん」

そういうとこ昔からや、と母は笑った。

「でも、最初から、あんたのデビューには反対やったけど、もう見られんのやね。
それはほんまに寂しいわ」

「あん時、許してくれてありがとう」

「おかげで、色んな世界、見してもろうたわ。
私こそありがとうやわ。」

私は、何だか今までの年月が重くて苦しくなって、泣いてしまった。

「泣かんといてや。
芸能人やなくなったって自分、お母さんの子供やねんから。
いくらでも一緒に頑張ったるから。
やから、お願い。
………お母さんより先に死なんといてな…」

母も不安だった。
たったそれだけのことに何で、気づかへんかったんやろう。

「大丈夫やで…先生も言うとったやん。
長い時間掛けて治療しようって」

「ごめんな。
大丈夫やのは分かってるんやけど、子供が出来へんよりお母さん、そっちの方が怖いんよ。
……なあ、A。
あんたはあんたのままで居ったらええ。
もう、何にもなろうとせんでええから。」

「………うん」

私は、引退する。

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