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第1章 ページ6

見慣れたハウスの個室に私はいた
外では子供達の笑い声が聞こえる

「イザベラ」

不意に背後から声をかけられた
振り向くとそこには
会いたくて
会いたくて堪らなかった彼がいた

「…レ、スリー…?」

ほっそりした彼は記憶のままそこに立っていた
驚きのあまりガタリと音を立てて立ち上がる

「レスリーなの?」

穏やかな微笑みを浮かべてそこに立つ彼は名前を呼んでも困ったように微笑むだけだった
私はそれでも良かった
彼がそこにいるだけで嬉しくて堪らなかった

高揚した気分のまま彼に駆け寄ろうと足を踏み出す
しかし、踏み出した先の床が崩れ私は重力に従って暗闇へと落ちた
まだ光にいる彼に必死に手を伸ばすも届かない
彼は暗闇に溶ける瞬間、私を見て優しげに目を細めた

「ごめんね、君は自由に生きるんだ」

完全に黒くなる一瞬にその泣きそうな声が聞こえた


遠くから甲高い機械音がなっている
それは段々と大きくなり耳元で鳴っていると感じる頃には
意識もはっきりしてきていた

機械音が規則正しく鳴る中
重い瞼を開けると真っ白な天井が見えた

腕からは点滴につながる管が数本付いておりどれも栄養剤だった
周りから気配も声もしないため個室なのだろう

枕元にはスイッチが置いてあって、その横に「ナースコール」と書いてあった
直訳で「看護師を呼ぶ」という意味であるから
ここは病院でさらにこれはサインベルの様なものだろうと当たりをつけて押し込む
暫くすると真っ白な制服に身を包んだ女性と白衣を纏った男性が駆け込んできた

白衣の男性は一通りの診療をした後、私に言った

「いきなり悪かったねAさん。私は担当医の駒場です
気分はどうだい?」
「…不調は特には」
「お名前は言えるかな?」
「神誓Aです」
「うん、記憶の混濁も見られないし受け答えも安定している。明後日には退院できるだろう」
「ありがとうございます」
「うん…実は話したいことがあるんだ」

駒場はスッと真剣みを帯びた目で私を見る
後ろに立っている看護師が駒場の腕を取って何かを咎める目をしたが駒場は首を横に振った

「先生!」
「いいんだ。
いいかい。Aさん。はっきり言おう、君のお母さんは亡くなったんだ」

真剣な目とともに発せられた言葉に
諦めに似た感情と鉛のように重い言葉が胸に落ちた

*1ー1→←歯車が回り始め



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al8056(プロフ) - この世界ではの話でネグリジュじゃなくてネグリジェだも思います! (2020年6月3日 0時) (レス) id: bd89f0112b (このIDを非表示/違反報告)
くるクラ(プロフ) - ayuさん» ありがとうございます!頑張って更新します!! (2019年5月21日 18時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
ayu - 初コメント失礼します!この作品がすごく面白くて更新楽しみにしてます!応援してます! (2019年5月21日 8時) (レス) id: e1359604fe (このIDを非表示/違反報告)
くるクラ(プロフ) - 白桜姫さん» ありがとうございます! (2019年5月21日 7時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
白桜姫 - あなたが神か?最高! (2019年5月20日 0時) (レス) id: b2ef42075e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるクラ | 作成日時:2019年5月19日 20時

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