かくして世界は切り替わりました

［43通目］ ページ8

アベルに従い、揺られること数十分
俺たち3人は明烏の執務室…ではなく地下に連れてこられた
初めての場所に困惑する

薄暗い部屋では何も見えないが酷く生臭かった

「アベル。ここは？」
「お嬢の仕事部屋」

パチリ、と部屋が照らされる
そこは中央にシミのついた椅子と手錠がぶら下がっていた
奥の机にはノコギリ、数種類のナイフ、何かが入ったバケツが置いてある

それだけで明烏の本来の役割が見えてきた

「お嬢の仕事は作戦立案じゃない
お嬢は……拷問官だ」

ポチャン、と水音がした



この部屋で待たされること数十分
一度アベルがどこかへ行き帰ってきたと思ったら麻袋を担いで来た

「よっす」
「…それは？」
「んあ？あー、秘密」

スコッチがたづねると、イタズラをする少年のような顔でアベルが笑った
麻袋から両足を打たれた男を取り出し、椅子に括り付ける
彼が次の犠牲者か…

「お嬢…はい……了解です
お前らここで待機だってよ」
「分かりました」
「おう！」

カラカラと笑いながらアベルは地上へと上がっていった
数分後、真っ黒な格好をしたカラスが降りてきた
御機嫌斜めらしくすごい殺気だ

「で？どうして秘書がこんなになってるのかな？」

無表情で視線をずらして俺に向ける
その鋭さにゾワリと背筋が硬くなる

「…捕獲する際に他の人員が目を覚ましまして他の秘書計2名を射殺しました
そこで「俺が頭を撃ち抜いた」…おい！」
「何か問題があったかな、リトルレディ」

ライがタバコを蒸かしながら聞く
彼女はふっと微笑む
それは温かいものではない
軽蔑と侮蔑の混じった冷たい笑みだった

「いいや、君はよくやったよ
暴徒と化した秘書を撃ち抜き、仲間を救った
お陰で裏でこそこそと嗅ぎ回っている銃とクスリの密輸ルートの存在が確証できなくなった
さらに言えば、コツコツと準備していた作戦が半分ほどおじゃんだ
いやいや、君はよくやったよ」

カラスが近づくたびに純度の高い殺気が肌を刺す
ピタリとライの前で止まり、彼女の拳がライの頰をとらえた

ゴツリ、と音がした

ライはよろめいた隙にカラスは足を掛け転倒させる
彼女は懐から銃を取り出し弾倉から弾を抜く

「私の友人は人を殺さない男だった
正しさに愛された男だったのんだ」

コツン、と床に弾が落ちる

「彼ならきっと注意で終わるだろうな
けど私は正しさに嫌われてしまっているんだ」

言い終わった瞬間、ライに銃口が向いた



発砲音が耳を貫いた

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