【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ41)

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《探偵社会議室》
『でね？敦君に単独潜入してもらいたいんだけど』

「単独潜入ですか！？」

「そう。手に入った資料に依ると、組合は地上での総攻撃を計画中らしい。その隙をついて手薄な空中要塞白鯨に潜入し管制(コントロール)を奪う」

「そんな大変な作戦を……僕一人で？」

『単身潜入だとハプニングに対応しやすい戦闘系の異能者が向いてる。ま、早い話敦君が一番逃げ足早いし』

「……。」

そんな私の言葉に敦君は呆れ顔だが、治は気にせず続けた。

「それに敦君は白鯨の中に捕らえられて土地勘がある。加えて最悪失敗しても、君なら殺されず捕らえられるだけの可能性が高い」

『私は戦闘には向いてないし、捕まってしまえばどうにもならないからね……敦君以上の適任者は居ないよ。
───やってくれる？』

暫く迷っていた様だが、決心がついたのか顔を上げた。いい顔だ。

「……太宰さん、Aさん。
──────やります」

《図書館》
『太宰と月影です』

「お待ちしておりました」

モニタールームに通され、説明を受けると私は軽く操作する。
繋がったのは敦君の無線だった。

｛ぼ、ぼ、ボクがそ、そ、操縦してるから……だ、だ、大丈夫！｝

『はーい、東西ヘタレコンビご機嫌如何かな？
谷崎君、強襲機の運転なんて中々出来ないから安心しなよ。
敦君、大丈夫。信じてるから問題無い。OK？もう直ぐ白鯨の視認圏に入るからね？』

ノンブレスで言い切ると、はいと返事が返ってくる。よろしい！

《白鯨》
「パイロットから応答がない？」

「はい」

「通信機のトラブルか……？」

そう言いながら扉を開くと、そこは───

「なっ…！？」

見るも無惨な地獄と化していた。人員は全て殺され、血飛沫が壁へ飛び散っている。
その奥の闇から、ゆらりと立ち上がりピチャリと音を立て血溜まりを踏みながら振り返った黒い影。
───芥川だった。

《探偵社side》
「中の様子は？」

｛静かです。誰もいません…妙です、皆何処に…｝

｛殆どが脱出した｝

突然そんな声が聞こえてきた。老人の声だ。

｛残った僅かな人員も、次の輸送便で白鯨を離れる。何故か分かるか小僧？
───終わり(・・・)だからだ。この戦争のな。次の一撃で、組合の敵はすべて灰となる。……この白鯨と共に｝

｛灰だって？……まさか｝

｛大方手薄な隙を狙ったつもりなのだろう。だがこの機(タイミング)で組合主力が白鯨を離れる動き。不自然と思わなんだか？｝