【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ25)

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249葉ページ25

「如何して此処が？」

『私の異能で降ってくる君を探してたんだよ』

「よくやったよ敦君、これでもう横浜は安全だ。……と、云えれば善かったのだけれど」

「何か未だ……問題が？」

『九作君がギルドに捕まってる限り、連中は何度でもこの大破壊を起こせるんだよね』

「唯一対抗可能な協力者である異能特務課も活動凍結された。これ以上は……」

「……太宰さん、Aさん。昔読んだ古い書巻(本)にありました。
『昔、私は、自分のした事に就いて後悔したことはなかった
しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた』」

『───「光と風と夢」……』

「それにはこうもありました。
『頭は間違うことはあっても、血は間違わない』。
＿＿＿空の上で僕はある発想(アイディア)を得たんです。皆からすれば論外な発想かもしれないし、Aさんを傷つけるかもしれない……
でも僕の血と魂が示す、唯一の正解に思えてならないんです」

そんな言葉に、私は微笑んで訊き返す。

『どんな発想(アイディア)？』

「協力者です。彼等は横浜で最も強く、誰よりこの街を守りたがっています。組合と戦う協力者としてこれ以上の組織はありません」

「敦君、それは……」

『いいよ治。……その、組織の名は？』

敦君は強い光の宿る目で私達を見て、その組織の名を口にした。

「ポートマフィアです」

「頭は間違うことはあっても、血は間違わない」

───中島敦「光と風と夢」