【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ22)

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246葉ページ22

「二人とも逃げてください。今すぐ。そして伝えて下さい。貴方の部下に危険が───」

安吾がそう訴える肩越しに、猛スピードで突っ込んで来る車が見えた。

「っ、A！」

『はいよっ！』

猛スピードで此方に迫ってきていた車をスキマで太平洋にご案内する。

『借りひとつね』

「……助かりました。
───Aさん、今回の戦争、如何“視て”いますか？」

『……そうねえ……鍵は敦君かな』

「判りました。それと……恐らく今度特務課から貴女指名の依頼が来ます。検討して下さい」

『了解』

「じゃあそろそろ行こうか。敦君待ってるし」

『あ……先行っててくれる？ちょっと用あるから』

「……判った、後でね」

治が立ち去って行ったのを二人で見送る。

「それで、何です？」

『……未来予知の件なんだけど』

……いつかは話さねばと思っていたが、飲んでる時には切り出しづらくて云ってなかった話だ。

『ちょい前に、記憶吹き飛んだ件あったじゃない』

「……ありましたね」

『あれの後遺症なのか何なのかな───予知が出来ない(・・・・・・・)んだよね』

「え……」

どうやら六年の記憶と共に文ストの記憶が一部吹っ飛んだらしく、記憶が戻った今でも思い出すことが出来ない。
少なくとも組合戦以降の記憶はほぼなく、他の記憶も曖昧だ。

『不完全になったってだけで完璧に出来ないわけじゃないよ。でもかなりの信憑性が落ちたかな』

「そう、ですか……」

『ただそれだけだよ。……じゃ、行くわ』

「気をつけて下さい。狙われているんですよね？」

『まあ、ね。誰かといる様にはする』

「そうして下さい。貴女狙われやすいんですから」

『私の所為じゃないんだけど！？』

ワタシチガウ。ワタシワルクナイ。

「はいはい、行ってください」

『酷いなぁ。じゃあね』

スキマで飛ぶと、治が何だか険しい顔で立っていた。

『どしたの？』

「敦君が拐われたらしい」

指さした先には派手に壊れた柵やら何やらが転がっている。あー、そう云えばそんなこともあったな……

『敦君はー……あーうん、空の上』

「成程ね……全て解った。一度引こう。準備しておかないと」

『了解』

山ほど用意しておかなければ街を覆う事は出来ないだろう。面倒臭い。

『敦君、無事だといいけどねぇ……』