【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ18)

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242葉ページ18

「しかし腑に落ちないね。合理と論理の権化たる森さんが、こんな茶番に人員を割くとは」

「茶番ではありません。貴方を守る為です」

『守る……ね』

「首領は、“Ｑ”を座敷牢から解き放ちました」

「！」

《駅》
「そうだ、紹介しますわ。列車の中で知り合ったのですけど……」

小さな子供が敦にぶつかり、そのまま通り過ぎる。困惑する敦の方を振り返ると、不気味に歪んだ嗤いを浮かべた。

「籠のなぁかのとぉりぃは……いついつ出遣ぁる」

「……！？」

袖を捲る。
腕にはカッターの刃が巻き付けられ、そこからぴたりぽたりと血が滴っていた。

「後ろの正面だぁれ？」

「ｱﾋｬﾋｬﾋｬﾋｬﾋｬｧｯ……！」

───災厄が、牙を剥いた。

《建物裏》
「莫迦な。Ｑに敵味方の区別などない。命あるものを等しく破壊する、狂逸の異能者だよ」

「闘争を征する為ならば、マフィアは手段を選びません」

「……何を解き放ったのか判っているのか？
あれは呼吸する厄災。何故Ｑが座敷牢に封印されたと思う？異能の中でも最も忌み嫌われる“精神操作”の異能者だからだよ」

『……私、行ってくるわ。どうせ向こうにいただろうし』

「駄目だA！」

伸ばされたその手をすり抜けて飛ぶ。既に修羅場だった。

『敦君！！』

矢張り敦君がＱちゃんの異能に侵されていた。春野さんが倒れている。

「Aさん、春野さんが敦さんに…！どういう事ですの！？」

『九作君止めて！お願い！！』

「お姉ちゃん如何してここに居るの！？此処に居たら───」

「あああ……！」

『……チッ』

両手脚が虎化した敦君が白い弾丸となり突っ込んでくるのを回避。

『九作君異能！止めて！』

「無理だよ！一回始まったら……！」

『治が来るまで耐えるしかないってか……！』

当たったら卒倒の耐久レース。目が虚ろで焦点の定まっていない敦君に肝を冷やしながらも対峙した。