【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ14)

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「(何だこの力は……異能力にしても異形すぎる！)」

「こいつらは……殺すのか？」

「どうだろう、人質って五人も要るかな？
……いや、待てよ？確かさっき出てきた彼は資料によれば団長の狙ってる《境界の案内人》の友達だったよね。何かしら役に立つかも」

「織田、お前の事だろう！何の話だ……！」

「……。」

その問いには答えず、素早く周囲を確認する。

「(銃が効かないのなら大質量で吹き飛ばすしかないが……何か、奴に衝撃を与える方法は───)」

《沿線》
「列車……！あれですわ！」

「きゃっ！」

「春野さん！ ……！！」

動き始めた木の根に足を取られた春野が転び、人の手を模した木の根が振り返ったナオミを鷲掴みにする。
動けない二人をよそに、列車が動き出した。

《組合side》
「よし、業務終了！地元警察が来る前に撤収だ」

「(完全に捕まッた……これじゃ〈細雪〉で姿を消しても意味が無い！)」

「妹さん、借りてくよ」

「ナオミを……如何する気だ」

「担当じゃないから何とも。まあ監禁か拷問か…」

「っ！そんな事が許されると思って居るのか！！」

「これが仕事だよ。君達みたいな道徳家(モラリスト)にはには理解できないかな？」

「……道徳(モラル)？」

谷崎が感情の抜け落ちた顔で呟く。
エンジン音に振り返れば、一台の貨物車が此方へ接近して来ていた。

「確かに探偵社には道徳観がある。
でもボクにとってナオミは……違うンだ。道徳とか悪、モラルやエゴ、そう云うのより次元が上で、較べられない」

「(あの貨物車、車線から外れてる……？)」

「喩えるなら、誰も神を何かと較べたりしない。そうだろ？」

「……真逆」

織田作が信じられないといった様子で零す。
気づいた時にはもう遅い。目の前まで貨物車が迫っていた。

「まさか……運転手にはこちらが道に見えているのか！？」

「それがナオミの為なら、僕は喜んで世界を焼く……！！」

突っ込んだ貨物車に吹き飛ばされる。それと同時に、地中に繋げていた木の根が引きちぎられた。

《事務員side》
「！」

「樹の動きが……止まった？」

「春野さん！」

走り出す列車へ二人で走る。先に飛び乗ったナオミが列車の取っ手を掴み春野へ手を伸ばした。

「春野さん！手を！」

何度も掠めた手が一際大きく伸ばされ───春野の手を捉える。何とか乗り移った二人を乗せ、列車は駅へと向かっていった。