225葉 ページ2
「……少年の頃、これと同じ型の銃を買うため二年働いた。それでも金は足りず四人殺した。今ではこの銃を造る会社も俺のものだ。
金は悪夢だ。欲しいものがひとつ手に入るたび、欲しいものがひとつ減る。やがて世界は、枯葉を燃やす青い煙のように退屈になる。だからねスタインベック君」
三つだけ薬莢を持ちフィッツジェラルドは不敵な笑みを浮かべた。
「俺の世界は今、輝きに満ちているのだよ…！」
ただ投擲されただけなはずの薬莢が、破裂音と共にクレーを粉々に粉砕した。降り注ぐ残骸の向こうに眺められる、ヨコハマの街。
「───あの街は、俺が必ず手に入れる」
《Aside》
ガコン、と入口のハッチが開く音がして振り返る。入口から社長が降りて来ていた。
「社長」
「……皆聞け。嘗て───三日か二日前には、戦争を免れる途は在った。しかしその途も今や閉ざされた。
社の鏖殺を謀るマフィア。
社の簒奪を目論む組合。
この両雄から探偵社を守らねばならぬ。太宰、A、説明を」
『はいはーい』
全員で席に着くと私と治が前に出る。いつも通り、最初に喋るのは治だ。
「組合は資金力に、マフィアは兵の頭数に優れます。正面から搗ち合えば探偵社と雖も脳天が弾け飛びます。そこで、我々は人員を
『守勢の要は何と云っても此処で与謝野先生を守る事。先生の治癒能力があれば、死なない限りフル回復出来ますから。……まあ、嬉しいかは別として』
ニコッと笑みを浮かべる与謝野女医。あの乱歩さんでさえ顔を顰めるレベルだ、本当にヤバい(経験済)。賢治君はあははって笑ってるけど───敦君、君の突っ込みは正しいで……(姐さんとの衝突後治療内容をしっかり伝えておいた)
「
「あれ、Aさんは如何するんですか？名前が挙がってませんけど……」
「Aは所謂遊撃手だよ。その異能を活かして柔軟に立ち回ってもらう」
遊撃手───A
『この作戦で重要なのはこの拠点を隠すこと。敵の異能者総出で此処に雪崩込まれると、私が加勢を頭に入れても攻勢が持たないんで』
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作者名：朱菜＠�� | 作成日時：2019年9月10日 1時
