【文スト】境界の栞 Ⅵ【太宰治】 (ページ1)

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「社長。……社長！」

「如何したんです？」

『敵襲かな？』

「うおあっ！？い、何時から居た！？」

『ついさっき。通話が切れたのは阻害機でしょ。襲撃なら連絡手段断つのはマストだし』

「え！？なら疾く救援に！！」

「……俺の手首を掴んでみろ」

「へ？」

『まあやってみなよ。直ぐ判るから』

おずおずと手を掴んだ敦君が目にも止まらぬ速さで一回転。彼が国木田君に技を掛けられたのだと気が付いたのは、地面に再び足を着けた後だった。

「！」

「武道の師匠から最初に教わった技だ。達人ともなれば、凡百体勢から相手を投げ飛ばせる。俺は未だに師匠から一本も取れん。十把一絡げの刺客に、あの人が負けるはずがない」

《福沢side》
「あ…が…っ」

「戻って主に告げよ。“善き心掛けだ”と」

全ての刺客を圧倒した福沢がそう云って、再び歩みを進める。最後に冷たく告げた。

「狙うなら今後も私のみ狙え。若し私の部下に手を出せば、如何な手段を用いても貴君の頸を圧し折りに参ずる」

《フィッツジェラルドside》
カシャカシャと音を立てて射出されたクレーターが、ひとつ残らず撃ち抜かれて砕け散る。それを横で眺めていたスタインベックが感心そうな口ぶりで云った。

「おみごと」

「探偵社の動向は？」

「事務所を捨てて別の施設に隠れたみたいですね。新拠点の検出は困難です」

「良いな。獲物に寝こけられては狩りは面白くない」

渡された短機関銃で再び射出されたクレーを正確に撃ち抜くが、顔色一つ変える様子は無かった。

「例の少女は？」

「何度か接触していますが、いずれも逃げられています。異能が厄介ですね」

「仕方がないな。彼女には人虎同様必ず協力して貰わねばならん」

「ポートマフィアも動き出してます。規模からすれば目下彼らのほうが脅威ですね」

その言葉と共に差し出された拳銃に、自らの過去を思い出す。