【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ27)

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165葉ページ27

『引き抜いたりするのアリ？』

「まァいいが……本人に交渉してくれ」

『ありがと』

流石に、独りでとは云っても誰も居なければ仕事を回すに回せない。原作の治の場合、芥川君だった訳だけど……

「僕では駄目なのですか」

『あなた遊撃隊束ねる仕事あるでしょ……頼みたいのは山々なんだけどね』

ムスッとする芥川君に苦笑い。何かあれば頼らせてもらうとしよう。

『んじゃ、ヘッドハンティングしに行くとしますかねぇ』

「今出歩いても侵入者つって地下室放り込まれるだろうが」

『大丈夫だ、(中也が付いてくるから)問題ない』

「お前なァ……」

『でもホントに付いて来てくれるんでしょ？』

「……まァな」

僕も……とソワソワする芥川君には樋口さんと共にお帰り頂いた。仕事しなさい。
という訳で、中也と共にマフィアビルを歩いていく。六年前にも感じた好奇の視線に加え、古参の何故此処にという驚きの視線も突き刺さる。

『慣れんなぁ……』

「だァから云ったろ」

ごもっともです。スンッとしながら付いて行くと、詰め所に志賀君やその他諸々の黒服達が居た。

「お前らご苦労さん」

「中原幹部！……あの、後ろの方は」

『どうも』

本名から情報引っ張られて策謀やら下剋上やらに利用されると面倒臭い。何となく名乗る事は止めた。

「今日から幹部になる奴だ。知ってる奴も居るとは思うが他言は無用だ」

「貴女は……」

『やっほー志賀君、仕事に励んでるかな？その様子だと出世はしてなさそうだけど』

「い、云わないで下さいよー……」

『ふふ。出世する気、あったりする？』

「え？」

『いやー、新しく幹部になったはいいけど部下が誰一人居ないし馴染みの弟子は出世して要職就いてるしさ。志賀君に来てもらいたいなーって』

「じっ、自分ですか！？」

驚き顔の志賀君に同僚達が野次を飛ばす。仲良いなおい……

『……まあ中也にも許可取ってるし、このまま詰め所で仕事するか私の仕事に巻き込まれるかは自分で決めていいよ』

「でも……」

「おい、これ断ったら失礼に当たるぞ志賀」

『別にそんな理不尽じゃないよ。環境が変わるってのはストレスなものだし』

却説、その返事は如何に？

「……中原幹部。自分は貴方に幹部に拾って貰った恩があります。そしてこの方には、何かと目を掛けてもらった恩があります。今度はこの方に返したいんです」

「手前らしいな。いいさ、行くといい」

「ありがとうございます！」