【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ23)

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161葉ページ23

《ルパン》
「……来ないな、A」

「うん……流石におかしいよね」

時刻は既に午後十一時。Aと別れてから、そして約束の刻限から何時間も経っていた。

「少し捜しに行ってくるよ。織田作は此処で来るのを待っててくれる？」

「判った」

宜しくね、と告げルパンを出る。Aのことだ、誘拐の類いであることはほぼ無いと考えていい筈だ。ならば、何か面倒事に巻き込まれているのか───そこまで考察した時、和服の少女に外套の裾を掴まれた。

「私？」

「……見つけた」

異能の光が迸り、仮面の夜叉がその刃を太宰へ向ける。焦りの表情を顔に浮かべた。

「……これは拙い」

《武装探偵社事務室》
「太宰と月影が行方不明ィ？」

「電話も繋がりませんし、下宿にも帰っていないようで」

「太宰ならまた川だろ」

「また土中では？」

「……。」

敦はその信頼のなさに呆れる。どうやら太宰の悪評はかなりのもののようだ。

「だが月影も一緒の筈だ。何かまたきな臭いことでもしているのだろうな」

「しかし先月の一件もありますし……真逆マフィアに暗殺されたとか」

「阿呆か。あの男の危機察知能力と生命力は悪夢の域だ。月影など単独で芥川を撃退したのだぞ？」

「え！？」

思わぬ事実に敦は目を見開いた。あの芥川を、単独で撃退？

「嗚呼、《蒼の使徒》事件ですか」

「(僕、初めから要らなかったんじゃ……)」

「とにかくだ。あの二人をマフィア如きが殺せるものか」

「でも……」

「僕が調べておくよ」

「谷崎さん、無事でしたか！」