【文スト】境界の栞 Ⅱ【太宰治】 (ページ12)

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60葉ページ12

『織田作！』

本部を急ぎ後にした私は、見慣れた後ろ姿を追いかけ声を掛ける。その後ろ姿の持ち主───織田作は、驚いた顔で此方を見た。

「Aか。お前も太宰から？」

『否、自分で来た。急がないと安吾が……！』

建物へと入り階段を駆け上がると、案の定椅子に縛り付けられた安吾を発見する。

「お二人とも来てはいけません！」

『いいから黙って脱出するよ！』

縄を持っていたナイフで断ち切り、織田作が安吾を支える。脱出した数十秒後、観測所は盛大な爆発と共に崩れ落ちた。

『随分とまた景気のいい爆弾だねえ。うちから盗んだ高性能爆薬かな。大丈夫、安吾？』

「大丈夫に見えるんですか？まあ、何とか無事です。全く……僕はこういう、爆弾とか危機一髪の脱出とかいう柄じゃ無いんです」

『ま、ミミックの方が一枚上手だったって事だね。だから助けを呼んでって云ったのに』

「呼ぶ暇もありませんでしたよ。嗚呼、目の裏に七色の星が見える。何です？これ」

「俺は見慣れてる」

『割と私も』

中也と体術の訓練をしていれば日常的に見るものだ。今回はそこまでのイン○ッシブルぶりでもなかったから見えてないが。

「早く報告をしなくては」

『報告……ね』

未だ織田作はこの事件の裏側にある絡繰に気がついていない。どうせ今日中には判るけど……今伝える必要は無いだろう。

『徐々にミミックの全体像は見えてきてる。ミミックの長、アンドレ・ジイド……奴は必ず始末するから』

「頼みますよ？……あれは？」

少し弾むようにころころと転がって来たのは、毒々しい程に蒼い鞠だ。安吾も使う気はなかったのか、少し苦々しげな顔をしている。手を伸ばそうとした織田作に動かぬまま声を掛けた。

『織田作』

「真逆罠なのか？」

「……ええ、そうです」

安吾が手鞠を嵌めた白い手袋で拾い上げ、私は織田作の手を掴んで引く。

『行こう。治が待ってる』

「待て、安吾は───」

『いいから』

「！」

「詳しくはAさんが全て知っています。彼女からミミックについて……そして、僕について聞けます。全て事実です」

「安吾、お前は……」

「……では」

安吾が森の中へと去っていく。今回は出てこなかったが、黒い特殊部隊は森の中に潜伏していた様だ。それを示す光点が安吾と合流して去っていくのを暫く見つめていた。

「……どういう事なんだ、A」

『……行こう。全部話すから』