ベースの君 (ページ1)

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空き教室ページ1

放課後。軽音部として所属している俺は、部室に行こうと物静かな階段を登っている途中。俺の足音が響くほど静かな廊下。そして何処からか心臓を刺激するような低い音がなっていた。ギターのベースだ。志麻くん以外の音に惹かれることなんてないと思っていたけれど、この音にはなにか特別ななにかがあった。
｢…誰｣
｢あ、同じクラスの折原センラやで｣
いつの間にか音の鳴る教室のドアを開けていた。ベースの本人は今警戒心MAXである葵リム、同じクラスのクールな女の子。その一匹狼感のある彼女は男女共に刺さったようで、高嶺の花と呼ばれるほど人気になっている。俺より彼女のほうがモテるという嫉妬なのかもしれないが、正直冷たい印象のある彼女が苦手ではある。
｢なにかあったの…？｣
｢あ〜…このベースかっこええなぁって思ってたらここまで来てたんよ｣
｢あり、がと…うれしい｣
前言撤回。彼女は人と接するのが苦手なだけだろう。さっきの張り詰めた糸のような環境は消え、彼女の警戒心もさっきよりは無くなっているようだった。
｢俺さ、正直ベースとかギターとか分からんからさよかったら葵さんが教えてくれへん？｣
｢いいけど、部活は？｣
｢あー！！忘れとった！6時半には部活終わるやろうから校門でまっとって！｣
｢わ、わかった｣
急に大声を出した俺に、葵さんは目をまんまるにして驚いていた。ばたばたと教室を出て軽音部の部室へ早歩きで行く。部室に着いたあと、メンバーにイジられたのは言うまでもない。

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