信じたい19 ページ9
.あなたside.
翌日、会社に着いて早々、阿部さんが人事から呼び出しを受けた。もうすぐ昼休憩というのに、視線の先の彼の席は空っぽで、全く戻ってくる気配がない。私が原因で阿部さんが何か悪く思われていたらどうしよう。そう思ったら、何も手につかなかった。
結局、昼休憩になってしまい、ひとりコーヒーを手にしてバルコニーへ出る。ベンチは座り空を見上げれば、自分の心を写したような曇空が広がっていた。
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阿部「…ぁ。また、ここにいた。」
少し離れたところから声がかかり振り返ると、へらへら笑った阿部さんがいた。いつもと同じような笑顔に見えるのに、でもどこか違和感があって。
「呼び出しは大丈夫でしたか…？」
阿部「んー？」
なんのこと？とはぐらかす気満々である。そんなことはさせない。じぃっと見つめれば、諦めたような目を向けられる。
阿部「呼び出しは大丈夫。ただね、ちょっとね。やっちゃった。」
…？
「…やっちゃった、？？」
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阿部side
「失礼します。」
人事部へ呼び出されれば、担当者と俺の同期がドヤ顔で待ち構えていた。別にやましい事もないので、堂々と向かい合う。
話を聞けば、昨日俺がこいつに手をあげそうになったことを、パワハラで訴える気らしい。…まあ、正直予想はしていた。
同期「昨夜俺を殴ろうとした！これは事実です！」
担当「ですから、双方の意見を聞かないことには、結論は出せません。」
同期「そんなの…、カメラの映像見たんですよね…！？コイツが悪いのは明らかじゃないですかッ！」
どうやら、会社の入口の防犯カメラに俺が殴りかかろうとしたところ、胸ぐらを掴んだところの映像がバッチリ残っているらしい。
担当「わかったから、とりあえず落ち着いて。」
担当者が同期を宥めようとするが、なかなか黙らない。
阿部「…殴りかかろうとしたのは事実です。胸ぐらを掴んだのも事実です。」
同期「ほら！！」
阿部「ですが、理由があります。」
そう言って、担当者と同期の前に１枚の紙を見せた。
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作者名：紫 | 作成日時：2023年12月30日 11時
