しるし:2 ページ8
首のあたりを行ったり来たり移動している唇は、柔らかな感触と、温かい呼吸を残してその道筋を残しているみたい。
その道筋を目を閉じて感じ取っていたその時。
ギリッ…!
うなじに続くその部分は、お風呂に入る前に渉にいたずらをされたところ。
そこに、さっき感じた小さな痛みではない、もっと鋭い痛みが走った。
「いっ…!!」
痛い、と声をあげそうになって、慌てて飲み込んだ。
鋭い痛みは一瞬だったが、じわじわと残る鈍い痛みが加えられた刺激の強さを物語っていた。
驚いていると、ゆらりと渉がからだを離してわたしを見下ろした。
渉はじっとこちらを見ている。
ただ、その顔がすごく苦しそうで。
単純だけど、その顔を見た瞬間にわたしはすぐに反省した。
急いで両手を渉に伸ばしてぎゅっと抱き締める。
わたしに引き寄せられるまま体を預けてきた渉の重さで少し苦しくて。
それに負けないようにきつくきつく渉を抱き締めた。
『苦しいんだけど…』
「いいじゃん、こうしたくなったの。」
渉はまた黙って、わたしにされるがままになっていた。
そしてさらに小さな声で
『苦しい…んだけど、…なんだこれ…』
と途絶え途絶えに呟いた。
耳元で低く微かに響いたその声は、ますますわたしの胸を締め付ける。
渉が不安にならないように、わたしがいるのに。
わたしが不安にさせてるなんて。
暫くすると渉はゆっくりと体を離し、あっち向いて、とわたしを一方に寄せさせた。
横向きになっていると、まるですがるように後ろから抱きついてくる。
お腹に回された渉の腕に自分の手を重ねると、じんわりと温かさが倍になる気がする。
『ごめん…。』
髪の束がさらりと落ちてうなじのあたりが出てきたとき、渉が謝ってきた。
「なにが?」
『…さっき、噛んじゃった…』
さっきの痛みはそれだったのか…
『赤くなってる、…ごめん。…もうしない。』
しょんぼりとこどものように反省の言葉を溢す渉は自信なさげで。
「渉だけだよ…」
と返事をしてしまった。
『え?』
「そんなことしていいの、渉だけだよ。」
渉からはそのあと何も返ってこなかった。
ただ、言葉がない代わりに、きつく抱き締められて。
その中で暖められたわたしは、ゆっくりと夢の中に落ちていった。
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まこ(プロフ) - 初めまして!一気に読みました。続きが気になります!またりかさんとの過去話もみたい気がします(*^o^*) (2016年2月17日 20時) (携帯から) (レス) id: c532cef3f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りく | 作成日時:2015年10月16日 22時