抱きしめてあげる。３ (ページ11)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:26,632 hit

12月：３ページ11

コーヒーを淹れてソファに戻ると携帯にメッセージが届いていた。

ひとつは渉から。

ー先輩に誘われたからちょっとだけごはん食べてくる。もしかして作った？

…作ったよ…。

でもきっと渉は、帰ってきたら少しでも口にしようとしてくれる。

作ってあるけど、明日のお昼でもいいよ。と返すと珍しくすぐに返信があった。

ー帰ったら食べる。

一言だけ。

でも渉の優しさがその一言に出ていて、自然と口元がゆるんでしまう。

もうひとつのメッセージは、タカからだった。

ー仕事終わった！

ーねぇ、飯食お！

ー俺もう電車乗ったから！この前のラーメン屋！

次々と短文で送られてくるタカからのメッセージに思わず笑ってしまう。

ーわったーから聞いた。今日わったーの部屋にいるんだろ？

ー俺あと15分くらいでそっちの駅、店来いよ！

渉が帰るのはきっと日付が変わる前あたりだろうか。

強引なタカからの誘いに、行く。とだけ返して、出かける準備をする。

そして渉にも。

ータカが近くに来てるみたいだから少し出掛けるね。渉が帰る前にはも戻るから。

タカと会うなとか、

連絡とるなとか…

そんなことは一度も言われたことはない。

だから、後ろめたさなんて感じる必要もないけど。

たまに見せてくる渉の表情は、無言のメッセージを含んでいる気がして。

知らず知らずのうちに、渉に言い訳めいた言葉を使っていた。

マンションの外に出ると、冷えきって吐く息は真っ白だった。

頬に風が当たると、冷たさで痛みを感じる。

ラーメン屋さんまでは歩いて10分。

寒さをしのぐたのめにポケットに手を突っ込むと携帯が震えた。

メッセージはまた二人から送られていた。

ー着いたー！Aどこ？

タカの相変わらず元気なメッセージ。

もうすぐ着くよ！と返すと、OKのスタンプが返ってくる。

早いな、返信…と笑いながらもうひとつのメッセージを確認する。

ーどこ行くの？迎えに行くから。

渉からのメッセージには、ノーとは言えない雰囲気が漂っていた。

普段は二人で部屋に向かわないようにしている。

でも、今日は断れない気がして。

ラーメン屋さんだよ、と返す。

渉はわたしのメッセージを見たようで、既読の文字が出た。

返信がないのが返信のような気がして、わたしは独り言のように、待ってるね、と付け加えた。