番外編〜藤ヶ谷さんの恋〜 ページ27
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何度もお札を差し出すさきちゃんをソファに座らせて、その手を優しく押し戻す。
その気持ちだけで十分だよ。
藤「…わかった。じゃあ俺から条件出してい?」
松「条件…?」
藤「お金はいらない。その代わりに飯作ってくれない?」
松「めし…、ですか?」
藤「そ。朝と夕の二回。最近手作りの物って食べてなくてさ」
松「…いいんですか?そんなことで…」
藤「そんなことなんかじゃないよ?俺の中で料理って結構大変な仕事だし」
松「でも…」
藤「朝は食べない日もあるし、夜も仕事で遅くなったり飲んでくる日もある。でもその時は必ず連絡するから。ね?」
松「……はい…」
少し申し訳なさそうに俯いて返事をした彼女。
そんな彼女の頭にポンと触れると、ふにゃ、って柔らかく笑った。
Aちゃんとは違う、さきちゃんの笑顔。
かわいいな、って
正直に俺の心臓が音を立てた。
藤「さきちゃん、良かったら風呂先に使ってよ」
松「あ…、すいません…」
気のせいかもしれないけど、俺の家に来てからのさきちゃんはなんとなく落ち着かない感じ。
そわそわしてる、っていうか。
まだストーカーのことを気にしてるのか、それともやっぱりここに来たことを後悔してるのか…
テレビの画面をただぼーっと見つめながら考えていた。
ーガチャ…
やがてリビングの扉が開く音がして、振り向く。
濡れた髪を一つにまとめたさきちゃんがおずおずと俺に近付いて立ち止まった。
松「…お風呂、ありがとうございました」
藤「あ…うん」
松「…じゃあ、おやすみなさい」
藤「おやすみ」
閉まる扉を見つめながら、自然と手が口元を覆う。
濡れた髪
幼くなった素顔
甘い香り
女の子らしいパジャマ
見たことのない彼女の一面に見とれてしまった自分。
高鳴る心臓の音を確かめて、ソファに沈み込む。
正直、こんな気持ちになるなんてこと自体もう無いと思ってたから。
Aちゃん以外の誰かに気持ちが向きつつある自分に、自分が一番驚いていた。
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北山茜(プロフ) - 続編まだまだ読みたいです!藤ヶ谷家に第一子。北山家に第二子と言うのはいかがでしょうか?陣痛が同じタイミングで来て同じ日、同じ時間に産まれる!みたいな? (2015年11月16日 21時) (レス) id: a2c03ba1e1 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - さっきの続きです>>>> 是非見てみたいです/////ほんとパパみつと主人公ちゃんの絡み大好きです!応援してます/////わがまま言うなら、もっともっとこのシリーズ続いて欲しいです/////応援してます!お願いします! (2015年9月18日 0時) (レス) id: 3bd711fde8 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 初めましてです!前もこのシリーズを読ませて頂いていたんですが、アプリの方を削除してしまってですね、、、不意に思い出してまたまた1から見させて頂いております///////そこで、図々しいのですが、リクエストです!家族4人で新婚旅行とか言うのはどうでしょう? (2015年9月18日 0時) (レス) id: 3bd711fde8 (このIDを非表示/違反報告)
鉄1(プロフ) - 久々のラブいちゃに大満足しました(//∇//)やっぱ宏くんTHE男って感じがいいです!みっくん担になるまではこうゆう人タイプじゃなかったんやけどな〜(^◇^;)やっぱみっくんは偉大です!Kさん東京も参戦ですよね!私の大阪参戦が遠い昔のようです(泣)楽しんできてね! (2015年9月16日 5時) (レス) id: 0357a2b680 (このIDを非表示/違反報告)
香(プロフ) - いつも楽しく拝見しております!リクエストしたくて初コメントさせて頂きました!…はなちゃんて私のことをまだ名前で呼んでいて…いつか「ママ(お母さん)」て呼んでくれる日はくるかな?って思っていたんです…!思春期はなちゃんとの家族事件…読みたいです!! (2015年9月14日 19時) (レス) id: b091154a0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2015年6月28日 9時