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( 決断する ) ページ37

中島 side




「たくっ!」






久しぶりに聞いたその声に、はっとした。



少し、振り返るのに迷いが生じて、



下唇を緩く噛んだとき、


腰に、よく見慣れた腕が回った。



何度も愛しいと思った感覚が背中にぶつかる。



………Aの匂いがする、



「卓、」



「……………」



「こっち、向いて。」



「……、」



「、もう、振り向いてすらくれないの?」



「っ、」



腕の力が緩んだのを感じて、ゆっくり振り返る。



「、ぁ」



振り向くと、少し間があって、Aの細い指先がほっぺたにかかる。



「……痩せすぎだよ、ばか。」



「……ごめん、」




「何やってんのっ、

笑顔で過ごせてないじゃん、」



「…………ごめん」





「なんで、なんで、

話してくれないの、私、卓にとってマイナスになってる?」




「っ、ちがう、」


「だったらっ、」


「ごめん。」



「ごめんじゃ分かんないよ、」


あ、また泣かせた。



きゅ、と目に力が入って、ついに涙が頰を伝う。



「……泣かせるつもりじゃなかった、」



「……………」


「がんばってるAに負担なんてかけるつもりやなかったと、」



「……わたし、もう、子供じゃないんだよ。」



「…、分かっとるよ」



「分かってないっ!



………頼ってくれない方が、苦しいよ、」




その言葉を聞いて、やっぱり、泣かせたくなかったと思った。









「A、俺、がんばるからさ、」



「……………」



「やけん、待っとって。


すぐ、迎えに行くけん。なんも心配せんで、待っとって。」



「……………」


「Aは、俺が決めたことならなんだって信じてくれるとやろ?」



「………うん、」



「じゃあいい子で待っとってくれる?」



「うん、分かった、」


待ってるよ、


ふわり、と微笑む彼女を見て、俺は覚悟を決めた。

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作者名:璃央 | 作成日時:2017年8月13日 16時

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