アクトレスの追憶 (1) ページ38
Noside
少しだけ、昔の話をしよう。
彼女……Aは、有名な会社の社長令嬢として生まれ育った。美しい容姿は誰しもを魅了し、天才的な頭脳は将来の役に立ってくれると誰もが期待した。
そんな完璧な彼女の欠点。それは……
「お嬢様、お時間です。こちらにお着替えください」
「い、いやです、そんなドレス……！」
「……お嬢様。僭越ながら、このドレスのどこに気に入らない点があるのですか？」
「そんなドレス、私には……に、似合わない……」
極度の恥ずかしがり屋、引っ込み思案、内気な性格。そして激しい自己嫌悪だ。
その美貌と才能から、身内には褒め続けられ、学友には嫌悪され続けてきたA。そんな環境が長く続けば、当然のように彼女は勘違いする。
＿＿＿＿＿自分は本当は醜く、身内は“お嬢様”だから世辞を口にするんだ、と。
そんな勘違いは、いつしか彼女の中で常識となり、口を開けば私は駄目だ、やら何で観月家に生まれてきてしまったのだろう、やら零すのだった。
そしてそれは、内気な性格へと繋がっていく。
内気な彼女がとりわけ避けてきたもの。
「こんばんは、Aさん。結城家の達也と申します。以後お見知りおきを」
「っこ、…………は」
それが、異性だ。
何を考えているか分からないし、力勝負では絶対に勝てない。その上彼女に近寄ってくる異性は、大抵が彼女に惚れ、今のうちに名前を覚えてもらおうという下心のある者ばかりだった。
当時のAは、喋るだけだ怯え、肩に手を置かれるだけで顔を真っ赤にしていたのだ。
蓄積されていった苦手意識は、次第に彼女の周りを囲う分厚い壁となる。
いつしかAは、社交界一ガードの硬い令嬢として、御曹司の間で騒がれるようになっていくのだった。
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です！更新頑張ってください！ (2018年8月18日 16時) (
レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています！吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは？間違っていたらすいません！ (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます！初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います！ (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リッコ | 作成日時：2018年8月7日 17時
