死神様のお仕事 6【刀剣乱舞】 (ページ10)

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仕事_106 ページ10

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『にっかり！』

Aがひび割れた声をあげた｡

彼女のそんな声を聞いたのは初めてで、にっかりは虚を突かれながらも肩越しに微笑む｡

にっかり「平気さ」

『…っ』

ひのと「いつもいつも、邪魔ばかり…！」

ひのとは左手をにっかりの胸元に翳した。前に霊波を叩きつけた、同じ場所に｡

ひのと「破っ！」

呪文とともに霊力が爆発する。二度目とあってにっかりも堪えきれなかった｡

よろめく彼から無造作に筆架叉を引きぬき、滴る鮮血を一振りで払うと、ひのとはAに向き直る｡

ひのと「忠実だねぇ、どんな手を使って従えたの？」

Aの心臓が冷えた｡

こいつ、楽しんでいる｡

ふいに、にっかりが低くうめいた。腹部にうがたれた傷口から滴(したた)る血が黒くにごっている｡

に「…ぐ…ぁ…っ！」

そのまま地に膝をついたにっかりは、何を考えたのか傷口を掴んで抉(えぐ)り出した｡

おびただしい量の血が滴って、地表をまだらに染めていく｡

愛染「にっかり？！」

驚愕する愛染は、飛来した刃のきらめきを視界の隅で捕らえた。反射的に体を引く｡

しかし刃の切っ先が左の肩口を軽く掠めた｡

瞬間生じた激痛が、肩口から全身を駆け巡って脳天をつきぬける。耐えきれずに悲鳴を上げて愛染はうずくまった｡

その間ににっかりは真紅の鮮血があふれる傷口を押さえながら立ち上がろうとし、しかしできずにくずおれる。

愛染もにっかりに倣(なら)うように、肩の傷周辺を爪でかきむしった。その顔色は紙より白い。

『愛染、にっかり…？！』

この苦しみ方は尋常ではない｡

仮にも付喪神だ。傷を受けて、ここまで苦痛を感じることなどありえない｡

Aの心中を読んだのか、ひのとは穏やかに口を開いた｡

ひのと「神霊にも通用するように、蠱毒(こどく)と密呪を封じ込めたんだ。どうだ？なかなか堪(こた)えるだろ」

胸中に氷塊が生じた気分で、Aはにっかりと愛染を見た｡

刃から生じた毒を、にっかりは傷ごと抉って体内から追い出したのだ。愛染も同様だろう｡

しかし注ぎこまれた蠱毒は完全には排除できず、今も体内で荒れ狂っているのか、二人とも立ち上がれないでいる｡

Aは強く柏手を打った。

だが傷は治っても毒は取り除けない。

『そんな…』

息を呑むAを見て、ひのとは楽しげに笑った。

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