死神様のお仕事 6【刀剣乱舞】 (ページ23)

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そのまま通りすぎると思われていた足音は、Aのいる部屋の前で止まった。

『(まさか、ひのとが戻ってきたのか…？)』

隠れるべきか身構えるべきか、あたふたしている間に妻戸が開く。

しかし、顔を覗かせたのは平野だった。

Aは我知らず全身で息をつく。

『どうした。私を探していたのか』

平野「あ……ええと…いいえ…」

彼にしては珍しく、歯切れの悪い返答だった。

失礼します、と頭を下げてまた走ってゆく。

Aは首を傾げて、平野のあとをそっと追った。

しばらく追うと、屋敷の角の簀子に何人かが集まっているのが見えた。

薬研「平野、いたか？」

平「いませんでした…」

鯰尾「一応風呂場も見てきたよ。いなかったけど」

乱「…ボク、広間を抜け出した時からいなかった気がする」

秋田「でもっ、あの時広間にはいました！」

『五虎退の虎か？』

薬研たちははっと振り返る。

薬「A…」

『さっき平野と会ってな。何か探しているふうだったから』

平「こ、これは…」

乱「あ…あのね」

厚「言って大丈夫なのか？」

乱「でも…！」

『何かあったのか』

乱たちは互いに顔を見合わせる。

しばらくして、意を決したように薬研が告げた。

薬「いち兄がいないんだ」

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ひのと「＿＿＿＿＿っ？！」

ぐわりと、夢から現実に引き戻される。

色をなくしたひのとは、衝撃で凍りついた喉の奥から必死で声をふり絞った。

ひのと「いまの…は……」

嘘だと、頭の中で誰かが叫んでいる。しかし、もう一方で誰かが叫ぶ。

ああ、やはり。

やはり自分が間違っていたのだ、と。

ひのとは頭を抱えて目を閉じる。

瞼の裏に、失われていた記憶の断片が見えた。

ひのと「…ぅ……ぁ……」

凄惨(せいさん)な光景の数々、その全てが自らの手で行われたもの。

ひのと「うっ…」

喉の奥に鉄の味がせりあがってきて、呼吸がままならなくなる。

懸命に呼吸を整えようとする彼の耳に、本来聞こえるはずのない音が聞こえた。

雪を踏む音だ。

自分は不可侵の結界を張ったはず。なのになぜ。

ひのとは緩慢(かんまん)な動作で首をめぐらせた。

ひのと「…っ……！」

一期「………」

抜刀した一期が、どこまでも冷たい双眸(そうぼう)で自分を見下ろしていた。

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