仕事_115 ページ19
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部屋を出ると、妻戸のすぐ裏に漣が立っていた。
薬研「いたのか、あんた」
漣「マイフレンド…怪我したのかい?」
薬「まいふれ…?Aのことか?ああ…首に痣があった。相当絞められたんだろうな。苦しかったろうに…」
漣「首を……?」
薬「それに打ち身もいくつか。きっとどっからか落ちたんだ。
……本人に自覚があるかどうか別として、結構傷ついている。身体もだが、心も…」
漣「へぇ……」
声色に怒気を感じた薬研は、ちらりと漣を見上げる。
漣は何かを探すように遠くを見渡していた。
漣「……みっけ」
薬「は?」
漣「少し、思い知らせてくる」
それだけ言って、すたすたと
薬「おい、そっちは物置しかねえぞ」
漣を追いかけて曲がり角をまがる。
薬「おいあんた……どこいった…?」
そこに漣の姿はなく、光の
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ひのと「はぁ……はぁ…」
本丸の敷地を出て、残った霊力で強力な結界を張ったひのとは不意に目眩に襲われ、がくりと雪上に膝をついた。
愛染の言葉が鼓膜に焼きついて離れない。
__「あんたが、陸奥守たちを傷つけて…折っただろ…!!」__
ひのと「俺が、折った?陸奥守を…?」
この本丸に来てから、一度も初期刀の彼に会っていない。他にも、いたはずの何振りかを見かけない。
それは自分が折ったから?
ひのと「わからない…」
わからない。
自分の信じていたことは、どこまでが偽りでどこまでが正しいのだ。
ひのと「俺を裏切ったんじゃ、なかったのか…?」
震えをおびた声が雪に溶ける。
《教えてやろうか》
はっと顔を上げると、光る何かが宙に浮いていた。
ひのと「え…?」
《お前がここの者たちに何をしたのか、見せてやるよ》
マイフレンドを傷つけた罰だ。
その声が届く前に、ひのとは夢の底に突き落とされた。
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『…冷たい』
薬「我慢我慢」
湿布を丁寧に首に巻いていく。
てきぱきと処置する薬研を見つめながら、Aは小さく呟いた。
『……だめなのだな』
薬「うん?」
『“捕らえる”では、やはり駄目なのだ』
薬研は軽く目を見張る。
ずっと不安げに揺れていた彼女の瞳に、光が戻っていた。
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年12月16日 16時