検索窓
今日:2 hit、昨日:90 hit、合計:538,263 hit

仕事_115 ページ19

.



部屋を出ると、妻戸のすぐ裏に漣が立っていた。





薬研「いたのか、あんた」



漣「マイフレンド…怪我したのかい?」



薬「まいふれ…?Aのことか?ああ…首に痣があった。相当絞められたんだろうな。苦しかったろうに…」



漣「首を……?」



薬「それに打ち身もいくつか。きっとどっからか落ちたんだ。

……本人に自覚があるかどうか別として、結構傷ついている。身体もだが、心も…」



漣「へぇ……」





声色に怒気を感じた薬研は、ちらりと漣を見上げる。



漣は何かを探すように遠くを見渡していた。





漣「……みっけ」



薬「は?」



漣「少し、思い知らせてくる」





それだけ言って、すたすたと簀子(すのこ)を歩いていった。





薬「おい、そっちは物置しかねえぞ」





漣を追いかけて曲がり角をまがる。





薬「おいあんた……どこいった…?」





そこに漣の姿はなく、光の残滓(ざんし)のようなものが見えただけだった。



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _




ひのと「はぁ……はぁ…」





本丸の敷地を出て、残った霊力で強力な結界を張ったひのとは不意に目眩に襲われ、がくりと雪上に膝をついた。



愛染の言葉が鼓膜に焼きついて離れない。



__「あんたが、陸奥守たちを傷つけて…折っただろ…!!」__





ひのと「俺が、折った?陸奥守を…?」





この本丸に来てから、一度も初期刀の彼に会っていない。他にも、いたはずの何振りかを見かけない。



それは自分が折ったから?





ひのと「わからない…」





わからない。



自分の信じていたことは、どこまでが偽りでどこまでが正しいのだ。





ひのと「俺を裏切ったんじゃ、なかったのか…?」





震えをおびた声が雪に溶ける。





《教えてやろうか》





はっと顔を上げると、光る何かが宙に浮いていた。





ひのと「え…?」



《お前がここの者たちに何をしたのか、見せてやるよ》





マイフレンドを傷つけた罰だ。



その声が届く前に、ひのとは夢の底に突き落とされた。



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _




『…冷たい』



薬「我慢我慢」





湿布を丁寧に首に巻いていく。



てきぱきと処置する薬研を見つめながら、Aは小さく呟いた。





『……だめなのだな』



薬「うん?」



『“捕らえる”では、やはり駄目なのだ』





薬研は軽く目を見張る。



ずっと不安げに揺れていた彼女の瞳に、光が戻っていた。

.

仕事_116→←仕事_114



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1278 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1053人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年12月16日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。