自由を求めた青い蝶【MHA】 (ページ8)

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その日から毎日、先生は空き地へやってきた。
毎日毎日、お菓子の入った紙袋を携えて。
初めは警戒して食べることなんてなかったけどさすがに毎日持ってこられてそれが手作りとなると申し訳なくなってきて、いつだったか忘れたけど空腹だったこともあり少しだけ食べてしまってからそのお菓子が少し楽しみになってしまっていた。
……単純だなんて言わないでよ、まだ5歳だし甘いものの誘惑には勝てないようん。

体づくりと勉強を交互にこなしている毎日、先生はいつの頃からか特訓メニューの考案や勉強を教えてくれるようになっていた。
これがまたなかなかに的確で、自分に今足りていないものがあの短時間で全て見抜かれているのが少し怖くもあった。

『ねぇせんせー、せんせーはなんでぼくのそばにいるの？』

「なんで、かぁ……んー、おもしろそうだからだよ」

「君が育っているのを見るのはとても面白い」
そうマスクに隠れた口角を上げつつ先生が持ってきたドリルを解いている僕の頭を撫でる。
この人はよく触れてくる、その時におそらく何かしらの個性を使おうとしているみたいだけど僕の個性とは相性が悪いのか僕自身になんの害もなかった。

『ふーん……あ、せんせーここわかんない』

「……あぁ、そこはここにも書いてあるとおりにここから持ってきて」

先生が持ってくる問題集は回を増すごとにどんどん難しくなっていって正直分からないところが多く解いていても楽しくない、でも分からないと言えば丁寧な解説を添えてくれるあたりしっかり伸ばそうとは思ってくれているようで……ドリルに書いてある対象年齢は気にしないことにした。
少なくとも5歳児に解かせるようなものでは無いとだけ追記しておくね。

「……でも、驚いたな。普通鉛筆を投げ捨てて辞めてしまうような範囲だと思うけど。」

『……ぼく、おいしゃさんになりたいの。どんなひとでもたすけられるおいしゃさん』

「お医者？ヒーローじゃないんだ？」

『……ひーろーはみんなをたすけるけど、そのひーろーやつかまったゔぃらんたちをたすけられるひとはあんまりいないもん』

だから医者になりたい。
医者ならば体の傷も心の傷もどちらも寄り添って救ってあげられるから。
それに前世みたいに前線に立ち続けて大切なものを失った後知らされるなんてもう嫌だ、戦闘の後方支援だって出来るし前世で培った医療の知識もある。
今度こそ、大切なものを失いたくないから。