自由を求めた青い蝶【MHA】 (ページ13)

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挨拶を済ませ掃除を行い前回持ってきた造花を今回の分に取り換えお供えを置いてから線香に火を灯す、線香置きにそっと横たえてから今度はしっかりと手を合わせこの1年に起こった伝えたいことを思い浮かべる。
あんなことがあった、こんなことをした、これが出来るようになった、これが出来ないままだった。
1年分ともなれば長くなるもので、目を開けた時には添えた線香がもうだいぶ燃えていた。
日も真上より西に来ておりお腹もなる、処分する分の造花を袋に入れて立ち上がった。

『また来年、今度は受験が終わって高校生になってるかな、制服着てくるよ。』

『じゃあ、いってきます。』
返答の帰ってこない挨拶も三回目。
でも嫌な気分では無い、きっと両親もくよくよして欲しい訳では無いだろうから。

少し離れて海岸、淡水と海水の混ざり合う不思議な匂いが風に乗る防波堤に腰を下ろし鞄から今朝作ったお弁当を取り出す。
まだこの時期だ、潮風は寒いため魔法瓶になっている水筒で暖かいお茶を飲みつつ冷えたおかずを頬張った。

僕を引き取ってくれた相澤さんは養子縁組を組んで他に何を言われても知らん顔をしながら僕の手を引いてあっちへ連れていってくれた、まだ若いのにお父さんと呼ぶのは申し訳なくて…というかパートナーが出来た時に初見で変な誤解をされない様にという意味も込めて、僕は兄さんと呼ばせてもらっている。

兄さんは極度の合理的主義で一緒に暮らし始めてすぐはその生活に目を疑ったのを覚えている、冷蔵庫の中はゼリー飲料のみでそれもしっかり賞味期限順に並べられていて家具も衣服ですらもミニマリストも目を見張るレベルで生活感がまるでなかった。

僕の食事や衣服に関しては厳しいくらい徹底して周りの意見や例を元に揃えてくれていたのに当の本人がそれな為僕の方が兄さんの食事等の管理をし始めるという謎の関係となり、今では家事全般僕の役目になった。
僕の作ったものはしっかり食べてくれるため昼食もお弁当、朝晩もちゃんと食べているか確認するために2人揃ってがルールになっている。

『…ん、ちゃんと味染みててよかった』

珍しく兄さんからリクエストを貰ったぶり大根、前世で師匠の好物だったのもあって今世でも三本の指に入る得意料理の1つだった。
兄さんも気に入ってくれたようで、時々…本当に時々こうしてリクエストしてくれる。
これは昨日の夜の残り、昨日よりもっと美味しくなっててもう少し改良の余地があるなぁと1人呟いていた。