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宮治Side
「野口さん何で走ってん？ツムなんかしたんか？」
「フッフ、ちょっとからかっただけや」
自販機から戻って来ると丁度俺のクラスから走り去る野口さんを見つけた。
教室に入ればやたらとニコニコしている侑に顔をしかめながら飲み物を二つ机に置く。
「だらしない顔すなや」
「だらしない顔なんかしとらへんわ」
「鼻の下伸びきってんで」
「んなわけあるかアホ」
買ってきたポカリを侑が飲み、そやこれ、と言って小さなビニール袋を渡された。
中身は購買でしか買えないプリンだ。
「これめっちゃうまいやつやん、わりとすぐ売り切れるやつ！」
「Aがくれてん、今日朝お菓子やったからそのお礼言うて」
「俺にもくれんの？」
「サムと二人で食べや言われたしな」
このプリン、安い美味いでなかなか食べられない事で有名なプリンだ。
2回だけ食べたがうまかった。
ちょっと固めの昔ながらのプリンだ。
「……ちゅーかいつの間にツムは野口さんの事名前呼びしてん」
「さっき」
ほーん、と弁当を食べながらそう言えば近くでご飯を食べていた女子から「治くん聞いてよ、さっき珍しく侑くんが女の子口説いてたんやで」と聞かされた。
ちなみにその女子は銀島派らしく俺らには全く興味がないとか。
……にしても口説く、ねぇ。
チラリと侑を見るといつになく上機嫌だ。
口説いたって言ってもせいぜい悪戯が成功したくらいだろう。
それで野口さんは逃げ出したと。
「口説いた結果がアレなんやな」
「もーちょい色々言おうと思うてたのにまんまと逃げられたわ」
「それ口説いたって言うんか？」
弁当を食べ終えてプリンに手をつける。
うん、めっちゃうまい。
「あーアカンわ、思い出したら笑ってまう」
「鼻の下びょんびょん伸びとるで」
「何とでも言えや」
ニヤニヤと笑う侑は上機嫌過ぎて見ていて気持ちが悪い。
ちなみに嬉しそうな顔のせいでクラスにちらほらいるお前のファンが変な顔してんぞ。
野口さんに何かあっても知らんからな。
「野口さんも可哀想やなぁ」
そうつぶやかざるを得なかった。
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作者名：Ryu | 作成日時：2020年7月9日 13時
