何億分の一青×緑その２ (ページ7)

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何億分の一 56 ページ7

「なにそれなにそれ！めっちゃ面白そーじゃん、マジであんだな記憶ソーシツって」

「まぁ正確には記憶の欠落ですけどね、ともの場合最近の記憶と昔の記憶がゴッチャになってしまってる所が見られるんで」

流星さん…スラスラと口から出てくるその説明は今作りあげたものなんかな？
すごいな…もしかして詐欺師とかの才能もあるんちゃうの？松岡くん…疑りもせんし。

「神山じゃなくてともでいいのか？昔そうやって呼ばれてたとか…かな？」

「そ…そうです、その方がしっくりくる感じがして」

「じゃ俺もそうするな！とも顔合わせ行くぞ」

ぐいぐいと引っ張られてそのまま控え室へと誘導された、チラリと振り向いた時に見えた流星さんの表情はなんだか不機嫌そうだったな。

けど、一緒に連れて行くわけにもいかないよね…ごめんね流星さん。

「お待たせ、藤井今日はこれで終わりだけど暇なら飯でも食いに行くか？」

さすがに先輩の誘いは断れないって…なんとと言えない顔で流星さんが頷いた。

僕としては大先輩に演技のこととか聞いてみたいところやったからラッキーやけどな。

松岡くんが連れてきてくれた店はホンマに気心の知れた店っていう感じでちょっとふくよかな女将さんのいるこじんまりした店だった。

「あ、おでん…食べたい」

僕の言葉を拾って嬉しそうに次々に注文していく。

「もしかして松岡くんここの店自慢したかっただけやない？」

流星さんの言葉にペロりと舌をだし『バレたか』なんて大口を開けて笑う…ホンマにええ人なんやな。

「ここ…米が美味いのよ、さっ！食った食った！」

「ホンマや…」

ひと口食べた流星さんが笑顔になるくらい旨いご飯…って流石やな。
食の番組をたくさん持っているだけの事はあるんやな。

僕は松岡くんから色々な質問をされてその度に黙り込んで…流星さんを振り返ると助け舟を出してくれる…。

食事が終わる頃には松岡くんと流星さんがやけに打ち解けていて、僕の事を宜しくなんて言っていた…。

子供ちゃうねんけどな僕。

「今日はありがとうございました、おやすみなさい…」

タクシーに二人して乗せてもらいタクシー券迄貰ってしまった…流石は大先輩やな。

「お疲れさん…とも」

「流星さんも貴重なオフやのにお付き合いありがとうございました」

行く時とは違ってニコニコしている流星さん。
やっぱイケメンだって笑顔のほうがいいに決まっとるやん。

「今日も俺ん家でええよな…ほらタクシー代も勿体ないやろ？」

駄々っ子みたいにそんなこと言うもんだからこっちまで笑ってしまったわ。