何億分の一青×緑その２ (ページ13)

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何億分の一 62 ページ13

「おっ帰り～」

「寂しかったぁ」

部屋に入るなり右から照史くんの抱擁と、左から望くんの抱擁と…つまり動けないって事や。

「ん～苦し…」

首だけ動かして流星さんを振り返るととても嬉しそうな顔をしてこちらに寄ってきた。

「二人とも、とものこと潰さんでや」

途端に緩む二人の腕、その隙間を縫ってスルリと流星さんが僕の腕を引っ張った。

「わふっ」

ドサリと落ちたところは流星さんの胸の中…ふむ…やっぱ落ち着くな。

「とも…ちゃあんと売ってきたな名前と顔」

「うん、めっちゃ、楽しかったし勉強にもなったで」

「流石俺らのともや！」

なんやろな…最近の照史くんと淳太くんからそこはかとなく感じる親バカ感は…。
めちゃめちゃ甘やかされてる感じはあるな。
あれかな？神ちゃんがきっとそういう立ち位置やったんやろうなこのグループのお子様的な…けど年齢的には望くんの方が下やけどなぁ。

僕の実年齢やったらダントツ一番下やけどなぁ。

ハッ！！！

もしかして神ちゃんやなくて僕が甘やかされとるんやろうか？
これははひとつ流星さんに聞いとかなあかん事やな。

『失礼します～こちらに皆さんのファンレター届いてます～』

ドサリと大きな段ボールが楽屋に運ばれてくる、中は個人個人小分けになっていて至れり尽くせりや。
待ち時間の間ワイワイと皆で手に取り話に花を咲かせた。

「あ…これ」

「どした？とも」

「いえ、最近同じ人から手紙が来てるんですけど」

「お～熱心なファンやな」

照史くんが楽しそうに覗き込みにくる。

「え？」

一瞬にして曇った顔に淳太くんも傍に寄ってきた。

「いつも白紙で…最初は何書いたらいいのか分からなかったのかなとも思ったんですけど、結構続いてて」

「それは…」

「気持ち悪いな」

バッサリと淳太くんが告げる…そうだった優しい顔しとるけど確かこういうキャラでしたっけ。

「ちょっと、心配やな」

「いえ、大丈夫です手紙だけやし」

「そうかぁ？困った事があったらいつでも相談してな、夜中だってかまへんから」

「ありがとうございます」

「絶対連絡するんやで」

「はい」

流星さんに念を押されながら芸能人って言うのは大変やな…少し同情するわなんて軽く考えていた。

けど、その時は僕は忘れてたんや…自分もその芸能人ってカテゴリに入っていた事を。