何億分の一青×緑その２ (ページ12)

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何億分の一 61 ページ12

『神山○洋さんオールアップですーー』

『お疲れ様でした～』

ADさんの紹介とたもに演者さんからお祝いや労いの言葉が飛んできて大きな花束を渡された。
こみ上げてきたものが胸を熱くする…ヤバイ、今何か言ったら泣きそうや。

…ってそう思って我慢していたのに、事もあろうにADさんは容赦ない一言を発してくる。

『では、神山さんから一言どうぞ～』

ってなに言ったらいいねん、神ちゃんならきっと上手いこと言ってくれるんやろうけど、僕にはそんな経験も語彙力もないんやから。

「えっと…あのぅ、復帰第一発目の演技のお仕事でしたので、みなさんには本当にご迷惑を掛けたと思います…けど、僕はこの現場が本当に楽しかった…たくさん失敗もしましたけど、何度も撮り直しさせてくれた監督さんやそれにお付き合いしてくださったみなさんに本当に助けられました…感謝しています…それから」

「ともも頑張ってたぜぇ」

「松岡く……あ、あれ？」

あとちょっとで挨拶終わるって思ってたのに…溢れてきた涙で声が詰まってその先の言葉が出てこなくなってしまった。
後輩思いなくせに空気読めないんかな…。

「あ～あ、泣かせちまったな…」

ポンポンと頭を撫でられて、そうしたらもう止まる涙も止まらないよね。

「寂し…みなさ…と…離れるの」

監督やスタッフの前でわんわん泣いてしまった僕の肩を抱き寄せていい子いい子してくれた松岡くんは凄くいい先輩だと思う。

周りのみんなもとてもあったかくてホンマにこの仕事やらせてもらえて良かったって思うわ。

同時に、今日…流星さんが来てなくて本当に良かった…こんな所見られたら絶対機嫌悪くなるねんな。

「あれ？今日お迎えは？」

「ええ、今から来るって言ってました」

「愛されてんな、とも」

「ええ…とても」

「は？惚気る？俺相手に惚気るのか？いつの間にやら成長しちゃった？なんか寂しいなぁ」

「ふふ…ありがとうございます」

「なぁ…でも…困ったときはいつでも来いよ」

そう言ってくれる松岡くんは優しい掌で頭を撫でてくれた。

「とも、ごめん遅なった！」

「流星さん！」

息を切らせ走ってきた流星さんは今日もキラキラしていた。
昨日あんな事したせいか恥ずかしくてまともに顔なんて見れないけどね。

「おー、ナイトの登場だな！じゃまたな」

「はい、ありがとうございました」

ペコリと流星さんと二人で頭を下げ、これで僕のドラマの仕事は全ておしまい。

明日からは仲間のところに戻れるんやな。