記憶101 ページ10
全員が水浴びを終わったわけではなさそうだ。
まだ大多数は川に残っている。
早く水浴びを終えて暇だからとからかいに来たのだろうか。
｢陰湿なことをなさるんですね｣
｢そう怒るな。……少し二人で話さないか？｣
怒るなと言うのであれば、もう少しまともな話しかけ方をして欲しいものだ。
断りたかったが、立花さんがとても真剣な顔をするので何だか断れなくなってしまった。
了承すると、こっちに来いと川とは反対の雑木林に連れていかれた。
正直、私は焦っていた。
触覚がない私は、水をかけられたことに水滴が落ちるまで気づけなかった。
普通ならかけられた時点で何かしらの反応を示すだろう。
振り向いた時、彼は少し目を見開いていた。
(やらかしてしまった……)
絵に集中しすぎて、足音にも気付けなかった。
せめて気付けていればと後悔するがもう遅い。
この辺でいいだろうと立ち止まった場所は、川がギリギリ見える程度の場所だった。
｢なんの御用でしょうか｣
そう聞くと、立花さんは箇条にして何かを話し出した。
｢一つ、聴覚が発達している。二つ、怪我の治りが早い。三つ、異常なほど少食。四つ、これは今さっき確信したことだが、触覚がない｣
｢……｣
……バレている。
これは私のことを言っているのだと分かった。
聴覚については、昨日というか今日の早朝に木の葉の音を聞いた時におかしいと思っていた。
あの距離の音が聞こえるなんて、やはり変だったのだ。
｢……否定しないのだな｣
確固とした理由があるからこそ言っているのだ、この人は。
否定しても無駄なことは分かっている。
｢……怪我については、どうして分かったんですか？ 誰かから聞きました？｣
伊作さん、食満さん、伏木蔵くん、乱太郎くんの前で力を使った時に口止めをするのを忘れていたが、先程立花さんが挙げた中にその事については特になかった。
つまり、この四人は候補から外れる。
しかし、学園内で私の治癒力を知っているのは伊作さんだけだ。
伊作さんを疑ってしまうのは、当たり前のことだと思う。
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作者名：小学７年生 | 作成日時：2020年1月13日 19時
