記憶138 ページ47
｢僕達が知ってるのは人の怪我を治せるってことだけだよ。僕自身が治してもらった張本人で、留三郎もその場に居合わせたから知ってる。一番最初に気付いたのは……伏木蔵、だよね？｣
間違った情報は何も無いのでコクリと頷く。
｢あとは傷の治りがすごく早いってこと。頬の傷も腕の傷も二日くらいで完治したと思う｣
伊作さんが話し終わったのを確認して立花さんが口を開いた。
｢私はこの力については知らなかった。だが、一週間前に鍵を探しに行った日にほかのことに気付いた｣
分かりやすいようにか、人差し指を立てて数える仕草をする。
｢一つ目は今伊作の言ったように怪我の治りが早いこと｣
｢二つ目｣と言って、今度は人差し指の他に中指も立てる。
｢耳がいいこと。常人では聞こえないであろう音まで聞きとっていた。先程のがいい例だろう｣
ちら、と動いた瞳は鉢屋さんを刺した盗賊に向けられた。
｢三つ目。……あの時は少食と言ったが、食べなくても平気なんじゃないか？｣
この場をもって確認をする立花さん。
私はそれにも頷いた。
近くに落ちていた枝を拾って地面に文字を書く。
【食べないと怪しまれてしまうので少しは食べるようにしてました。あまり無理して食べると戻してしまうので本当に少しですが】
書き終わるのを皆が待っていると思うと早くしなくてはと急いでしまう。
読みやすいよう丁寧に書くということはできなかったが、それでも読めないほど汚くはないだろう。
｢最後に、感覚……触覚がない｣
眉を下げて悲しそうな顔をする皆に何だか申し訳なくなって、どうにかしなければと思った。
【でも悪いことばかりではないです。耳が良くなったおかげで鍵を見つけることができたし、痛みを感じなかったから縛られてても辛くなかったです】
書き終えて顔を上げる。
口角を上げて微笑み、気にしてないということを伝えるが、皆の顔はさらに暗くなってしまった。
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作者名：小学７年生 | 作成日時：2020年1月13日 19時
