記憶134 ページ43
少し離れたところから尾浜さんが盗賊を縛り終えたと報告した。
縛られた山賊たちは一箇所にまとめられ、それとは離れたところで今日の話をする。
怪しげな行動をすればすぐに分かる位置なので無問題だ。
「捕まった時、なかなかの演技だったぞ!」
小平太さんはそう褒めてくれたが、あれは別に演技ではない。
「ありがとうございます」
自然な反応が出来たことで作戦は無事終了したのだ。
褒められたのであれば素直に喜んでおこうとお礼を言う。
「でも、私なんかより皆さんの方が――」
……鉢屋さんの後ろからだろうか。
草のすれる音がした気がして、言葉を止めてそちらを向く。
「……なんですか?」
自分を見られてると思ったのか、訝しげな顔をした鉢屋さんが私に問いかけた。
凝視されていい気がする人はいない。
うさぎか何かが動いただけかもしれなかったが何、も話さないのも不自然なので訳を説明した。
「今、あの辺から音がしませんでしたか?」
「音ぉ?」
鉢屋さんはさらに疑わしげな目で見てくる。
どうやら彼には聞こえていなかったようだ。
それどころか、やはりと言うべきなのか、鉢屋さんだけでなく他の人にも気づいた人はいなかった。
「……鍵の件もある。見に行ってみてもいいかもしれないな」
立花さんがフォローするようにそう提案した。
「先輩が何をおっしゃいますか。ここは私が行きますよ」
立花さんを制止させた鉢屋さんは歩き出す寸前、こちらを盗み見るように鋭い視線を向けてきた。
音源にたどり着いた鉢屋さんが草むらをのぞき込むようにして上半身を前に傾ける。
すると何かが勢いよく飛び出し、同時に鉢屋さんはそれから距離をとるように一歩後ずさる。
「……ゲホッ」
「三郎!」
不破さんが叫びながら駆け寄る。
空気が一瞬にして凍りついたのが分かった。
当たり前だ。
鉢屋さんが血を吐いたのだから。
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月13日 19時