記憶133 ページ42
(すごい……)
目にも止まらぬ早さとはこういうことを言うのだと思った。
それほどみんなの動きは見事で、無駄がなくて、山賊たちは何も出来ずに終わった。
｢今解いてあげるね｣
こちらへにこりと微笑む伊作さんに先程の面影は感じられない。
穏やかな彼もちゃんと忍者なのだ。
猿轡のせいで喋れないため、小さくお辞儀をすることで感謝の気持ちを示す。
他の人達は倒した山賊たちを縛り上げている。
｢もう少し早く助けられたら良かったんだけど｣
後頭部で結ばれている手ぬぐいの結び目を解きながら伊作さんは言った。
十分早かったと伝えたかったが、結び目が固いのかなかなか猿轡が外れないため首を横に振ることで気持ちを伝える。
｢かったいなあ……。もう少し待ってね｣
｢どれ、貸してみろ｣
苦戦する伊作さんを見かねたのか、食満さんもこちらに来た。
食満さんに交代して数秒後、するりと布が緩み口元がやっと自由になる。
その時に解きやすいようにと伸ばしていた姿勢が少し前屈みになり、まとめていた髪が数本だけ顔横に流れた。
猿轡のせいで唾液を飲み込むことが出来なかったためぽたぽたと口から垂れた唾液が地面に三つほどシミを作った。
汚いものを見せてしまったと申し訳なくなり二人を確認する。
｢……っ｣
｢……ごめんなさい、汚くて｣
バッと顔を背けた伊作さんと、何かを堪えるような表情をして口を手で隠す食満さん。
いくら汚くったって生理現象なのだから、仕方ないと割り切って欲しかった。
私だって一応は女子なので、こういう反応は少し傷付く。
｢縄も解いて貰えませんか？｣
そう問いかけると、慌てた様子で任せてと引き受けてくれた伊作さん。
耳が少し赤い気がするのは気のせいだろうか。
かなりきつく縛られていたようでこちらも取るのに時間がかかったが、くないで一部を切ることで解決できた。
｢痛かったよね｣
縄の下から見えた肌には、縄の痕が赤くくっきりと残っていた。
伊作さんは私の手を取って痕をなぞるようにさすった。
｢……えっと？｣
行動の意味が理解できず、顔を覗き込んで話しかける。
我に返ったのかハッと目を見開く伊作さん。
｢ご、ごめんね！ 特に深い意味は無いんだけど、その、女の子に酷いことするなあって思って……。本当に深い意味は無いから気にしないで！｣
そんな必死にならなくてもわかっているのに。
宥めるように小さく返答した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小学７年生 | 作成日時：2020年1月13日 19時
