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記憶52 ページ7

前の世界のことはよく覚えていないが、これが普通ではないことは分かる。



「はい。医療は発達してましたが、人間自身の治癒力はそこまで変わってないかと」



二人が同時に相槌をうつと、それ以降会話が広がることは無い。




「……」



「……」



「……」






沈黙が医務室を包む。






……私はこれからどうなるんだろう。



仕組みを解明するために解剖でもされるのだろうか。
はたまた、どれほどの傷がどのくらいで治るのかを確かめるために酷いことをされるのかも。




(嫌だな……)




傷が絶対に治るという保証もないし、怪我をすれば痛みは感じるし。
所謂マゾヒストではないので、そういうこととは距離を置いて生きていきたい。
それに私の場合、最悪命を取られかねない。



暗いことを考えていると伊作さんが口を開いた。



「このことは、三人だけの秘密にしましょう」




予想外の言葉に目を見開いた。




「雑渡さん、誰にも言わないでいただけますか?」



「もちろんだよ。他でもない君の頼みだしね」






ほかでもない。


二人の間にどんなことがあったのかも気になるが、今はそれ以上に気になることがあった。



「……何故、黙っててくれるんですか?」




意味のわからない私は考えることもせずに、気になったことを聞いた。
私の異常体質は、突然変異というか、特異的な“妖術”という可能性だってあるのに。
それなのに、隠しておいてくれるなんて……。



伊作さんはふわりと、春風を思わせるくらい穏やかに笑う。



「だって……」




一度言葉を止め、声色をさらに優しくしてから再度言い直す。



「だって、言わないで欲しいんでしょ? Aちゃんは優しいって知ってるから。だから、僕も優しくしてあげたいなって思ったんだ」



「……」



最初に浮かんだ言葉は“馬鹿じゃないの”。
学園長の命令があるとはいえ、私はこの学園の人にとっての危険因子でしかない。
それなのに『優しいって知ってる』だの『優しくしてあげたい』だの。



頭蓋骨の下に綿菓子でも詰まっているのかと嘲ってやたくなる。



けれどそれができないのは、口に出そうとしている言葉と、思ったことが違っていたから。



畳に雫が落ちてシミを作る。



「……ありがとう、ございます」



結局、涙とともに零れたのはそんな言葉だった。

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設定タグ:忍たま , RKRN , 天女   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月8日 20時

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