記憶87 ページ42
そうですか? と会話を切り、前の様子を確認する。
そこではやや肥満体型の男の子が駄々をこねながら歩いていた。
「しんベヱくん、お腹すいちゃっみたいだねぇ」
斉藤さんの間延びした声が説明してくれた。
「なるほど」
ついに止まってしまったしんベヱくんの元に、先頭を歩いていた伊作さんと食満さんが行き、私たちもそこに追いついた。
「食満先輩、お昼にしましょう」
しんベヱくんはそう食満さんに交渉を持ちかけるが、まだ昼には早い。
困った食満さんはどうにかしんベヱくんを説得しようとするが、石のように動かない。
あまり強くは言わない食満さんは多分、後輩に優しいというか甘いのだろう。
正反対の性格かと思っていたが、甘さという共通点が伊作さんと食満さんにはあるのだ。
頭を現実に戻し、ふむと顎に手を当てて私は悩む仕草をとる。
つまりはしんベヱくんはお腹が減っただけであって、それが満たされれば再始動してくれるということだ。
(それなら)
私は一歩前に出て、肩にかけていた風呂敷を広げた。
中からは竹皮に包まれたおにぎりが三つ出てくる。そのうちの一個を私は手渡した。
「これを食べていいから、もう少し頑張ろう」
食事のいらない体なので、全てを渡してしまっても良かったが、そんな行動を取れば普通の人はおかしいと思う。
なのであえて、自分の分を残して一個だけを渡したのだ。
「え、でもそれはAちゃんのでしょ? いいの?」
伊作さんが心配してくれるが、私はいいのだと答える。
「私少食なので、おにぎり三個は多かったんです」
「ほ、本当にいいんですか……?」
恐る恐る聞くしんベヱくんだったが、その口からは今にもヨダレが溢れようとしていた。
その様子に少しだけ笑ってからもちろんと返すと、嬉しそうにそれを受け取りあっという間に平らげた。
「それじゃ、問題も解決したし、もう行くぞ」
食満さんの言葉に伊作さんがうん、伊作さんを除く全員がはいと返事をした。
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月8日 20時