空っぽを埋めるモノ２【RKRN】 (ページ36)

今日:76 hit、昨日:56 hit、合計:297,921 hit

記憶８１ページ36

｢入ってもいいかしら？｣

了承の返事を返すと和服を艶やかに着こなす山本さんが目に入った。

｢いい感じね。似合ってるわ｣

上から下までじっくりと、それはもう舐め回すように見た山本さんはそう言った。

着方が合っていたなら良かった。

｢山本さんもお綺麗です｣

社交辞令でもなんでもなく素直に思ったことを述べると、慣れているのか軽くありがとうと答えた。

｢今日一日捜索活動に充てるそうなの。今食堂のおばちゃんとくノ一教室の子達がお弁当を作ってるわ｣

これは手伝った方がいいだろうか。

｢私に出来ることがあるならやります｣

｢そうねぇ……｣

少し考える山本さんさん。

悩むということは手伝えということでその話をした訳ではなさそうだ。

山本さんは私の顔をじっと見つめてからちょっと待っててと言ってどこかへ行ってしまった。

やることがあるなら私がその場に行った方が早いのではと思ったが、彼女は既にどこかへ行ってしまったのでもう遅い。

残された私は何を持ってくかと考える。

いや、それ以前に……。

(何に入れていくんだろう)

お弁当と言っていたが、そもそもこの時代にカバンなんてあるのだろうか。時代劇なんかでは、懐やら袖の中からものを取り出すイメージがあるが。

……何を持っていこうなんて悩んだが、この時代のお金なんて持っていない。

少し落ち込んだところで山本さんが戻ってきた。