記憶７１ ページ26
｢ご馳走様でした。食器は……｣
｢私が戻しておくわ。ほら、寝て寝て｣
そう催促されたが、
食堂とトイレは逆方向なため、部屋を出て直ぐに別れる私たち。
｢雨のせいで今日は冷えるから早く戻るのよ｣
｢はい、おばちゃんにご馳走様と伝えてください。ありがとうございました｣
(今日は冷える……か)
まったく寒さなど感じない。
｢……｣
部屋に戻ったら試したいことが出来た。
私はトイレへ小走りで向かい、戻すついでに用を足した。
もうまるまる二日、何も食べていないのに。
体が食事を受け入れてないようだ。
手を洗い部屋に戻る。
誰にも会わなかったのは、今が昼も終わって午後の授業が始まる時間だったからだろう。
布団には入らずに、そのままその上に座る。
そして自分の左腕を軽くつねってみた。
｢……｣
痛さはない。
力が弱かっただけかもしれないと言い聞かせ、今度は先ほどよりも強い力でつねる。
それでも、まったく痛みが来ることはない。
手を離して確認すると、つねっていた部分は赤くなっている。
頬を傷つけられた時も、腕を刺された時も痛みは感じたのに。
どんどん自分が人間ではなくなっていくような感覚に、不安と恐怖心が押し寄せてきた。
受け入れたくない現実に抗うように、私は腕をつねり続ける。
(痛い、痛い……！)
認めたくなくて、心の中でずっとそう思い続けた。
いや、思ってはなかった。
思わせ続けた。
｢痛い……はずなんだ……｣
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作者名：小学７年生 | 作成日時：2020年1月8日 20時
