記憶68 ページ23
(あ、若い方の山本さんだ)
何も言わずに勝手に開けてくるなんて初めてのことだ。
それに、いつもは静かに開けるのに、今回は随分と豪快に開けた。
山本さんは私を視界に捉えると許可も得ずにズカズカと部屋に入ってくる。
そして目の前で立ち止まって、私には彼女の影が覆う。
ただならぬ雰囲気に、また何かあったのかと言葉を待つ。
山本さんが息を吸い込み、鮮やかな紅が開かれた。
「どうして寝てないの!」
それと同時に出された、山本さんにしては大きな声。
「……え?」
一瞬呆けてしまった。
どうしてと言われても。
まだ夜も浅い。
逆にこんな時間に寝てるのは二、三歳の子供くらいではないだろうか。
「晩御飯も断ったそうね。やっぱり具合悪いんじゃない。ほら、布団敷いてあげるからちょっと退いてて。いい? 明日はずっと寝てること」
捲し立てるように喋る山本さんに呆気に取られる。
手際よく布団が敷かれて、私はその上にポイッと転がされた。
「きっと心労よ。明日お腹が空いたら私に言って? お粥持ってきてあげるから」
まったく具合悪くないし、まだ眠くないのだが。
だが山本さんは話を聞いてくれる雰囲気ではない。
「ほら、早く寝て。寝るまでここに居るから」
それは困る。
私が、ではなく山本さんがきっと困る。
早めに寝て、こんなめんどくさい仕事から解放させてあげなければ。
人に見られてるというのが邪魔をしてなかなか眠れなかったが、目を瞑っていたらいつの間にやら寝ていたみたいだ。
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月8日 20時