記憶６２ ページ17
｢伏木蔵、本当に大丈夫なの？｣
｢乱太郎も僕を信じてくれないの？｣
｢だって……｣
現在、私は伏木蔵くん、乱太郎くんと一緒に医務室に向かっている。
伊作さんが怪我の手当をするために自室ではなく医務室にいるからだ。
あの後、結局は伏木蔵くんの圧に負けてしまい『試すだけだからな』と私が折れた。
(治らないところを見れば満足するだろ)
力を信じているのは伏木蔵くんのみ。
本人である私がこうなので、乱太郎くんも不安そうだ。
(伏木蔵くん、悲しむだろうな……)
今でも相当責任を感じている二人は、一縷の望みに賭けた最後の頼みの綱である私も何もできないと分かれば更に落ち込むだろう。
気が重いまま歩き続けると医務室の前に着いた。
中からは伊作さんと先程の声が聞こえる。
｢こんな時に限って校医の新野先生がいないなんてな｣
｢仕方ないさ。忍術学園と関係の深い城の危機らしいからね。もう戦場に着かれたかな｣
｢今は自分のことだけ心配してろ｣
どうやら新野さんという方が今日に限って居ないようだ。
校医ということは、この学園専属の医者か。
つくづく運がない。
伏木蔵くんの言っていた不運というのはあながち間違ってなかったのかもしれない。
｢伊作先輩。入ってもいいですか？｣
伏木蔵くんが声をかけた。
｢あれ、伏木蔵？｣
｢私もいます｣
次いで乱太郎くんも喋る。
｢二人とも来てくれたのか。いいよ、入って｣
私もいるのだが言い損ねてしまった。
今からでも言うべきかと口を開いたが声を出す前に伏木蔵くんが｢失礼します｣と障子を開けてしまう。
私はまあいいかと開いた口を閉じたのだった。
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作者名：小学７年生 | 作成日時：2020年1月8日 20時
