記憶６１ ページ16
｢いつから知っていたの？｣
｢知っていたわけじゃありません。Aさんが僕におまじないをかけてくれたの、覚えてますか？ あの時本当に痛みが引いて、それでもしかしてって｣
話を聞いて違和感を覚える。
その時はまだ自分ですら治りが早いことに気づいていない。
それに、本当に痛みが引いたとはどういうことだろう。
遠くないあの時のことを思い出してみる。
(あの時は落とし穴に落ちて足をくじいた伏木蔵くんを医務室に運んで……)
頬の傷について聞かれたから話したら伏木蔵くんがおまじないをしてくれて。
医務室に着いた時に私も彼におまじないをして、それだけのはずだが──
ハッとして顎に当てていた手を離す。
｢それって、痛いの痛いの飛んで行け……ってやつ？｣
｢そうです｣
｢それで本当に足の痛みが消えたってこと？｣
｢はい。だからその力で伊作先輩も！｣
向けられる期待の視線には
なんだ。
伏木蔵くんは気づいていた訳じゃなかったのか。
ほっとしたのもつかの間、新しい問題が出てきてしまったのに気付く。
それは伏木蔵くんが勘違いをしてしまっている点。
伏木蔵くんはあれがおまじないって知らないらしい。
……言った方がいいよな。
なんだろう。
サンタの存在を信じてる子どもに“サンタは君のご両親だよ”の真実を教えるような罪悪感がある。
だがまあ、勘違いさせたまま話が進んでも厄介なことになるのは目に見えているし言うしか道は無いのだけれど。
｢あのね、伏木蔵くん。あれはただの気休め……子ども騙しというか……端的に言うと、効果は無いんだよ｣
言葉を選びたかったが、いい表現が見つからなかった。
きつい言い方になってしまったと後悔するが言ってしまったものは仕方がない。
それでも、伏木蔵くんは諦めなかった。
｢信じてくれなくてもいいです。だから一度、伊作先輩に試してください｣
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作者名：小学７年生 | 作成日時：2020年1月8日 20時
